無殻太陽虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 13:43 UTC 版)
無殻太陽虫は太陽虫形の原生生物の小さな一群であり、通例ではタイヨウチュウ目(Actinophryidae)をあてる。淡水でもっともよく見られる代表的な太陽虫であり、特に湖や川の水生植物の近くに良くいるが、海洋や土壌からも見付かる種もある。いずれも単細胞で形は表面がでこぼこした球形、殻はなく、細胞からたくさんの軸足を放射状に出していて、それを使って通りがかった獲物を捕食している。細胞の中央部(内質、endoplasm)は透明で細胞核などがある。一方外層(外質、ectoplasm)には多数の微少な液胞があって浮遊を助けている。細胞の周辺部に収縮胞がいくつかあって水を排出しており、ときおり大きく丸い膨らみが出っ張っている様子が観察される。 2属7種がしられている。タイヨウチュウ(Actinophrys)は中央に一つの核を持つ。たいていは直径が40-50 μm程度で、軸足は長いものでは100 μmに達する。オオタイヨウチュウ(Actinosphaerium)は直径200-1000 μm程度と大きく、多核で、淡水のみから見出される。他にEchinosphaeriumとCamptonemaの2属が記載されているが、これらはActinophaeriumのシノニムとする意見がある。 核膜の一部消失を伴う有糸分裂(semi-open mitosis)のあとに分裂により増殖する。条件が悪化すると、多層の壁と珪酸質で釘状の骨片に覆われたシストを形成する。シストの状態ではペドガミー(オートガミーの一種)という特異な現象が起きる。これは減数分裂により2つの配偶子に分裂し、それが再び融合するというものである。これはこのグループで起こる唯一の有性生殖であるが、生殖というよりは遺伝子再編というほうが近い。 軸足には二重渦巻き型に配列した独特の微小管束が通っている。この微小管はタイヨウチュウでは核膜から伸びているが、オオタイヨウチュウでは核膜から伸びる種と原形質から伸びる種とがある。放出体はdense granulesと呼ばれる一様な顆粒で、繊維状の接着性物質を放出する。これは餌を捕食する際に接着して逃さない効果があると考えられている。 鞭毛は持たないが分子系統解析に基づいて原始的なストラメノパイル類であると考えられている。ストラメノパイルには他にも太陽鞭毛虫のキリオフリスが属するため、これと近縁だとする意見もある。最新の動向として、Cavalier-Smith and Chao (2006)は分子系統解析によりキリオフリスとの近縁性を否定し、オパリナに近縁だと論じている。 Mikrjukov K. A. and Patterson D. J. (2001). “Taxonomy and phylogeny of Heliozoa. III. Actinophryids”. Acta Protozoologica 40: 3-25. Cavalier-Smith, T. and Chao E. E.-Y. (2006). “Phylogeny and megasystematics of phagotrophic heterokonts (kingdom Chromista)”. Journal of Molecular Evolution 62: 388-420. (この節 from en:Actinophryid (20:45, 20 May 2006 UTC) by Josh Grosse)
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