炊事場・調理員
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/07 09:01 UTC 版)
部隊の食事(兵食)は部隊本部の隷下である経理委員(部隊の糧秣を掌る経理部主計将兵で構成。歩兵連隊では首座である陸軍主計少佐ないし陸軍主計大尉以下委員全員が主計将校)が運営し、献立の決定や食材・調理機械の購入などを行う。炊事場では経理委員の配下である炊事班長(古参の軍曹)が後述の調理員となる炊事兵や、食材などの納入を行う出入業者を監督した。 兵食は部隊などの炊事場で調理されるが、その調理員はその部隊の兵員で構成される(炊事兵)。その選考は中隊の人事掛准尉(特務曹長)が行い、毎期入営してくる新兵の前職・特技・家業・性格・性根等を鑑み入営約3、4ヶ月後の第一期検閲時期に選抜者を炊事兵に指名した。そのため板前やコックといった元料理人は優先的に炊事兵に指名されるが、入営者にそのような適当な者が居ない場合は畑違いの者が充当される。なお、炊事兵以外にも銃工兵・靴工兵・縫工兵・蹄鉄工兵・通信兵・鳩兵・衛生兵・喇叭兵などがあり、これらは「特業兵」と称しそれら分野の専門者となる。 炊事兵は普段の居住場所こそ内務班の大部屋であるが生活や勤務内容は一般兵とは別立てであり、午前2時や3時の真夜中に不寝番に起こされ炊事場に出勤し(昼食後に炊事場で仮眠が与えられる)日夕点呼頃に班に戻り、三度の食事も班ではなく炊事場で食した。炊事兵ほか「特業兵」は歩兵・騎兵・砲兵・工兵・輜重兵・航空兵・戦車兵・船舶兵などといった兵科ないし兵種に属し、それらの部隊で勤務するが、一般の兵と異なり演習への不参加が許可されるなど区別はされた。炊事兵の役得として「炊事特製」とも称されるトンカツやステーキといったスペシャル料理を作ることができ、面倒見の良い古兵の炊事兵は普段洗濯といった自身の身の回りの世話を行ってくれている初年兵(「戦友」と称す)に、この「炊事特製」をこっそり持ち帰り与えることもあった。 軍隊を除隊し「地方」に帰ったそれら元特業兵の中には軍隊時代の「特業」の経験を生かした職に就く者もおり、元炊事兵は料理人として食堂・レストランを開業することもあった。料理人にならなかった元炊事兵も軍隊で覚えた食事・調理法を「地方」に持ち帰った。
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