漢字の字体の包摂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 14:42 UTC 版)
「JIS X 0208」の記事における「漢字の字体の包摂」の解説
1997年の第4次規格の定義によれば、包摂(ほうせつ、unification)とは、複数の字体を区別せずに、それらに同一の区点位置を与えることである。第4次規格では、漢字の字体にかぎって、包摂する字体の範囲を明確に定めている。 なお、規格の定義によれば、字体 (ZITAI) は、図形文字の図形表現としての形状についての抽象的概念であり、字形 (ZIKEI) は、字体を手書き、印字、画面表示などによって実際に図形として表現したものである。一つの字体には無数の具体的かつ可視的な字形が存在する。一つの字体についての字形の異なりはデザインの差である。 ひとつの区点位置に包摂される字体の範囲は、その区点位置の例示字体およびその例示字体に適用することができる包摂規準によって決まる。すなわち、ある区点位置の例示字体は、その区点位置に対応する。そして、例示字体において、例示字体を構成する部分字体を包摂規準にしたがって置き換えたものも、その区点位置に対応する。 例えば、33区46点(僧)の例示字体として、「人偏に曽」が示されている。そして、包摂規準連番101には、部分字体「曽」、「曾(第1画および第2画は「八」)」および「曾(第1画および第2画は「ソ」)」が示されている。したがって、例示字体「人偏に曽」の部分字体「曽」を「曾(第1画および第2画は「八」)」または「曾(第1画および第2画は「ソ」)」に置き換えた文字も、33区46点に対応する。 第4次規格には、第1刷に対する正誤表で追加された一つを含めて、186個の包摂規準が定められている。 ある区点位置の例示字体が複数の部分字体からなるときに、それぞれの部分字体について包摂規準を適用できる。一つの部分字体に包摂規準を適用した後、その部分字体に重ねて包摂規準を適用することはできない。他の区点位置の字体をも包摂するような包摂規準の適用は許されない。 例示字体は、その区点位置の字体の一例にすぎず、規格が推奨する字体ではない。包摂規準は、一般に用いられている漢字とこの規格の区点位置との対応づけのためのみに用いるものとされている。規格は、例示字体および包摂規準に基づいて一般に用いられていない字体を創作することのないように求めている。 漢字集合の漢字は、完全に一貫した包摂規準に基づいて選ばれてはいない。例えば、41区7点は、第3画および第4画が交わる「彥」にも交わらない「彦」にも対応している (包摂規準連番72)のに対して、20区73点は第3画および第4画が交わらない「顔」のみに対応し、80区90点は第3画および第4画が交わる「顏」のみに対応している。 包摂、包摂規準および例示字体という用語は、第4次規格で採用されたものである。第1次規格から第3次規格までの規格票解説は、漢字と漢字との関係を、独立、対応および同値の3種類に分け、同値と認められた文字を「ただ一つの符号に合併する」と説明していた。同値には、「まったく同形と認めるもの」のほかに、「書体等の違いと認めるもの」および「字形の違いがわずかであると認めるもの」が含まれていた。 第1次規格には「この規格では……字形の詳細は定めない」と規定されていて(細分箇条3.1)、その規格票解説は「この規格は、文字概念とその符号を定めることを本旨とし、その他字形設計等のことは範囲としない」と述べていた(引用にあたって、原文のコンマを読点に改めた)。第2次規格および第3次規格にも、具体的字形設計を適用範囲としない旨が備考として示されていた(箇条1の備考)。第4次規格も、「この規格は、図形文字及びそのビット組合せを規定するもので、用途、個々の図形文字の具体的字形設計などは、この規格の適用範囲とはしない」と規定している(JIS X 0208:1997箇条1。引用にあたって、原文のコンマを読点に改めた)。
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