漢字の創成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 16:24 UTC 版)
紀元前2500年頃の黄帝の時代、史官であった蒼頡が鳥の足跡からヒントを得て初めて文字を創成したという記事が『説文解字』・『淮南子』・『四体書勢』などにある。これが一般的な漢字創成説であり、後世、鳥跡文字(ちょうせきもじ)とか蝌蚪文字(かともじ)とか呼ぶものである。しかし、これは確実な史証がないため伝説にすぎない。このようにいずれも個人の独創とすることは中国文化史の特異な点である(中国の書論#書体の創始者を参照)。 今日、最古の漢字として確実なものは殷代の甲骨文字である。ただし、甲骨文字が中国における漢字の起源ではない。漢字は自然・人事の現象を絵画的に表現した象形文字に端を発しているが、甲骨文字は純粋な象形文字ではなく、すでに少し発展した段階のものである。董作賓は、「甲骨文の原形文字は更に1500年前に遡るであろう。」という。 甲骨文字は殷代後期の遺物であるが、それ以前に漢字が使われていた可能性を示すものとして、陶文(とうぶん)がある。中国の新石器時代 に陶製の容器があるが、その側面や底面に漢字の原初形を想像させる符号のようなものがあり、紀元前5000年頃のものといわれる半坡遺跡などから発見されている。これを陶文、または刻画(こくかく)符号と呼ぶ。陶文を現在の漢字とを直接結びつけることは難しいが、年々出土報告があり、今までに約2,500件ほど報告され、その内、殷代前期から中期に相当する遺跡から見つかった陶文には甲骨文字と同形のものが含まれていることがある。
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