温室効果ガスの量と温室効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 08:54 UTC 版)
「温室効果」の記事における「温室効果ガスの量と温室効果」の解説
温室効果ガスの増加量に対する温室効果の増強の度合い(=気温の上昇度)は、もともとの温室効果ガスの量によって異なる。例えば、もともと二酸化炭素がない大気であれば、二酸化炭素が吸収特性を持つ波長の電磁波(以降「赤外線」とする。)は吸収されていないので、多くの赤外線が「余っている」。ここに二酸化炭素が入ってきたとき、大量に「余っている」赤外線が二酸化炭素に吸収されるようになり、温室効果が生じて気温が上昇する。 しかし、もともと二酸化炭素が多い大気であれば、赤外線の多くは吸収されており「余っている」赤外線は少ないので、ここで二酸化炭素が増えても、増えた二酸化炭素が吸収できる赤外線は少ないため、もともと二酸化炭素がない大気に二酸化炭素が入ってきたときに比べ、温室効果の増強が小さく、気温の上昇も小さい。ただしこの場合、逆に二酸化炭素が「余っている」状態になり、吸収能力に余裕ができてしまう。そこで何らかの原因によって気温が上昇した場合は、気温上昇によって増えた赤外線を吸収し、温室効果を増強させてしまう。これらの現象は、二酸化炭素以外の温室効果ガスにおいても同様に起こる。 現在問題となっている地球温暖化は、「二酸化炭素の増加により温室効果が強まっているために起こっている」可能性が高いとされている(図参照)。しかし、温暖化の原因としては、太陽放射の変化や未知の気候因子に起因している可能性も否めないとされる。また、「二酸化炭素の増加による温暖化」に対する根強い反発もある。 温室効果ガスは、単体で増加するのみではなく、他の温室効果ガスの増減を誘発すると考えられている。例えば、温室効果ガスのどれかが増加して気温が上昇すれば、腐敗の促進や海水温上昇に伴うメタンハイドレート融解によってメタンが増加、蒸発促進によって水蒸気が増加、生物活動が活発化して呼吸により排出される二酸化炭素が増加するといった効果をもたらす。しかし、この場合、同じ気温上昇に伴い、植物の活動が活発化することによってメタンや二酸化炭素(炭素)の固定が促進されたり、対流の活発化によって水蒸気の働きで熱が潜熱という形に保存するのが促進されるなど、増加を抑える現象も発生する。これらフィードバック機構がうまく働くことで、地球は過度の温暖化や寒冷化から守られているといえる。しかし、フィードバック機構がいつどのようにどの程度働くかということは、詳しく分かっていない点が多い。 一説には、地球の平均気温は1905年から2005年までの100年間に約0.7℃上昇したといわれている。気温の上昇が自然や社会に与える影響というものは多種多様で、不明な点も多い。そのため、「地球温暖化によるリスク」の予測には議論の絶えないものも多い。しかし、わずかな上昇でもさまざまな気候の変化をもたらし、生態系や人類の生活に与える影響は計り知れないものになるだろうと考えられており、人類共通の重要課題として取り組まれるべきものである。
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