沖縄のゾウムシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 07:19 UTC 版)
サツマイモにはイモゾウムシとアリモドキゾウムシという世界的な害虫が存在する。これらゾウムシの食害や切り口からの菌の侵入により、サツマイモはストレス応答反応としてイポメアマロン等の有毒なフラノテルペノイドを産生するため、食用ばかりか家畜飼料としても利用ができなくなる。サツマイモ害虫であるゾウムシ類の本土での蔓延を防ぐため、植物防疫法はゾウムシ類の分布地域である南西諸島からのサツマイモを含む寄主植物の移動を規制しており、分布地域ではゾウムシ類の根絶防除事業が進められている。 現在、鹿児島県の奄美群島北部の喜界島、沖縄県の沖縄本島に近い久米島と津堅島の3箇所でそれぞれ事業が進められており、沖縄の根絶事業ではイモゾウムシとアリモドキゾウムシを、鹿児島ではアリモドキゾウムシを防除の対象としている。 アリモドキゾウムシの根絶防除事業で核となるのは不妊虫放飼法と雄除去法である。久米島(面積6000ha)でのアリモドキゾウムシの根絶防除事業は1994年に開始され、初期には密度抑圧のための性フェロモンと農薬を染み込ませた誘殺板の散布が行われた。その後1999年から不妊虫放飼が開始され、一時期週当たり最大300万頭が放飼された。これらの防除が効果を奏し、2002年に島の全域で行われたトラップ調査で捕獲された無マーク虫(野生虫)はほぼゼロだった。その後、急峻な海岸林や放置水田跡のノアサガオからアリモドキゾウムシが寄生した茎が見つかり、不妊虫放飼法と雄除去法による防除を継続しつつ、生息場所を潰していく地道な作業が続けられた。事業は難航したものの、2012年6月から2012年12月28日まで根絶確認調査が行われ、2013年1月11日、事業開始から18年を経て、同島でのアリモドキゾウムシの根絶が達成されたことが那覇植物防疫事務所から発表された。2013年4月22日にはアリモドキゾウムシの移動規制対象地域から久米島町を解除する省令改正が農林水産省でも完了し、久米島での根絶が宣言された。 双翅目昆虫では不妊虫放飼法を用いた根絶成功例は数あるものの、鞘翅目昆虫の広域的な根絶事例は久米島でのアリモドキゾウムシが世界で初めてである。1999年以降、この根絶事業で放飼された不妊虫の累計は4億6千万頭にのぼる。
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