永井陽之助とは? わかりやすく解説

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永井陽之助

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/08 01:38 UTC 版)

永井 陽之助(ながい ようのすけ、1924年9月9日 - 2008年12月30日)は、日本政治学者学位法学博士(北海道大学)、東京工業大学青山学院大学名誉教授。戦後日本を代表するリアリズム国際政治学者として有名[1]

人物

東京出身。安積中学を経て[1]1945年 第二高等学校文科乙類卒業、1950年 東京大学法学部政治学科卒業

東京大学では堀豊彦に師事。当初は政治意識の研究など、政治学・政治理論研究にその重点を置いていたが、ハーヴァード大学での在外研究中にキューバ危機という米ソ二大国間のパワー・ポリティクスを目の当たりにし、強い衝撃を受ける。

一方で、依然として日本国内ではそのような権力政治的要素を等閑視し、イデオロギーに規定される形で国際問題についての硬直化した議論が行なわれていることに不満を感じたことから、国際政治に関する研究・評論を開始、『中央公論』1965年5月号に発表した「米国の戦争観と毛沢東の挑戦」で論壇にデビューする。同時期に論壇に登場した高坂正堯とともに、現実主義の立場から日本外交を論じた。

核時代の権力政治という状況への注目から、いわゆる非武装中立主義だけでなくタカ派に対しても批判的であり、1980年代前半の米ソが厳しい対立状態にあった「新冷戦」期には、岡崎久彦らを軍事力を行使可能な手段として過大視する「軍事的リアリスト」として批判、一方で軽武装・経済重視の戦後日本外交を「吉田ドクトリン」と名づけ高く評価し、岡崎との間に「政治的リアリスト―軍事的リアリスト」論争を展開した。

永井の評論活動は三島由紀夫[要出典]福田恆存などからも高い評価を受けていた。福田恆存は『平和の代償』を「論壇のバラバラ事件」と称している(竹内洋によれば、戦後の進歩的文化人思惟構造をバラバラにしたという意味である)[2]。また菅直人は大学時代に永井の影響を受け、自らの所信表明演説でも言及している[3]

1967年、「日本外交における拘束と選択」(『中央公論』掲載、『平和の代償』収録)で第2回吉野作造賞を受賞。1984年、『文藝春秋』に連載した『現代と戦略』で文藝春秋読者賞を受賞。1984年から1986年まで日本国際政治学会理事長を務めた。

青山学院大学時代の門下生に、林正義東京大学教授や中山俊宏慶應大学教授がいる。

略歴

1962年、法学博士の学位を北海道大学より授与される。また、ハーヴァード大学訪問研究員として二回訪米(1962年9月-1964年3月、1982年9月-1983年9月)。

著書

単著

  • 『平和の代償』(中央公論社〈中公叢書〉, 1967年、改版1986年/中公クラシックス, 2012年) 
  • 『政治意識の研究』(岩波書店, 1971年)
  • 『柔構造社会と暴力』(中央公論社〈中公叢書〉, 1971年)
  • 『多極世界の構造』(中央公論社〈中公叢書〉, 1973年)
  • 『冷戦の起源――戦後アジアの国際環境』(中央公論社〈叢書国際環境〉, 1978年/中公クラシックス(I・II), 2013年)
  • 『時間の政治学』(中央公論社〈中公叢書〉, 1979年)
  • 『現代と戦略』(文藝春秋, 1985年)
    • 新編 現代と戦略』(中公文庫, 2016年) 解説・中本義彦
    • 『歴史と戦略』(中公文庫, 2016年) 解説・中本義彦。第二部を再編

編著

  • 『現代人の思想(16) 政治的人間』(平凡社, 1967年)
  • 『20世紀の遺産』(文藝春秋, 1985年)

共編著

訳書

脚注

  1. ^ a b 酒井 哲哉『永井陽之助と戦後政治学』一般財団法人 日本国際政治学会、2014年。doi:10.11375/kokusaiseiji.175_70https://doi.org/10.11375/kokusaiseiji.175_702023年3月2日閲覧 
  2. ^ 竹内洋『革新幻想の戦後史』中央公論新社、2011年。ISBN 9784120043000 p65
  3. ^ 第174回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説


先代
川田侃
日本国際政治学会理事長
1984年 - 1986年
次代
宇野重昭




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