氷山衝突後の救援信号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/06 09:56 UTC 版)
「ジャック・フィリップス (通信士)」の記事における「氷山衝突後の救援信号」の解説
午後11時40分にタイタニックが氷山に衝突したが、その時無線室にいたフィリップスとブライドは全く気付かなかった。4月15日に入った午前0時5分頃にスミス船長が無線室へ入ってきた。無線室ではちょうどフィリップスとブライドが勤務交代しようとしているところだった。スミス船長は「船が氷山に衝突した。現在被害状況を点検させている。君たちは救援を求める通信を準備してくれ。だが私が指示するまでは送信するな」と指示して出ていった。緊急事態と悟ったフィリップスはブライドとともに仕事に戻った。数分後無線室に戻ってきたスミス船長は「救援を求めてくれ」と指示。フィリップスが規定通りの救援信号を送った方がいいか尋ねると船長は「そうだ。すぐだ!」と答え、ボックスホールが書いたタイタニックの現在位置を記した紙をフィリップスに渡した。フィリップスはすぐに「CQD(遭難時の国際的呼び出し記号)…CQD…MGY(タイタニックの呼び出し記号)…41.46N、50.14W(タイタニックの位置)…CQD…MGY」を叩いた。 最初に応答があったのは午前0時18分頃、北ドイツ・ロイド社(ドイツ語版)のフランクフルト号からの物だったが、待機するというだけのそっけない応答だった。その数秒後カナディアン・パシフィック海運(英語版)のマウント・テンプル号がタイタニックの方へ向けて進路を変えたという応答があった。その後、ロシアのビルマ号、アレン・ライン社(英語版)のヴァージニアン号からも同様の応答があったが、いずれの船も近くにはいなかった。 午前0時25分、キュナード社のカルパチア号から通信があったが、CQDに気づいての応答ではなく「レース岬にタイタニック宛の通信がたまっていることを知っているか」と尋ねる内容だった。フィリップスはその質問には答えず「本船は氷山に衝突、緊急の救援を求める。CQD。位置は北緯41.46、西経50.14」と打電した。カルパチア号は「船長に告げるべきか」と尋ねてきたのでフィリップスは「すぐに頼む」と応答。その数分後にカルパチア号から58海里(107キロ)離れたところにいるが、全速でそちらへ向かうと応答があった。しかしその位置からでは到着まで4時間はかかり、それまでタイタニックは持たない状態だった。 0時34分にはフランクフルト号から自船の位置を知らせる通信があった。それは277キロ離れた位置だったが、フィリップスは救援に駆けつけてくれるよう打電した。その通信の途中に姉妹船のオリンピック号が割り込んできたが、500海里(926キロ)も離れた位置におり、駆け付けるのは不可能だった。フィリップスは待機してほしいと打電した。 ちょうどその時スミス船長が入ってきて他船の応答はあったか報告を求めた。フィリップスはカルパチア号についてのみ報告を行った。船長が「どの信号を送っている」と聞くとフィリップスは「CQDです」と答えた。その時ブライドが最近の国際会議で導入されたばかりの新しい遭難信号「SOS」も送ることも提案し、スミス船長の許可を得て、0時45分にフィリップスはSOS信号を送った。以降フィリップスは電力が尽きるまでCQDとSOSの信号を送信し続けた。 水平線上には灯が見えていた。スミス船長はこれを船に違いないと考え、カルパチア号より近くにいるこの船と連絡が付いたかを数分おきに無線室に尋ねに来た。その都度、フィリップスは船長から船の深刻な状況を告げられた。 1時25分頃、オリンピック号から「南下して本船と合流するか」との通信があったが、事態の深刻さを飲み込めていないことにイライラしたフィリップスは「女性客をボートに乗せている」と応答することで危機的状況を伝えようとした。その時フランクフルト号が「何事か説明を乞う。本船は10時間ほどの距離にいる」と割り込んできたが、フィリップスはこれに怒り心頭になり「大バカ者めが!何事かだと!」と怒鳴りながら「通信の邪魔だ。引っ込め」と打電した。 1時45分にフィリップスは再度カルパチア号に通信し、「できるだけ早く来てくれ。機関室のボイラーまで浸水している」と打電した。
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