死体写真師
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 22:39 UTC 版)
10年近く前に両親が交通事故で亡くなり、たった1人の肉親である妹の百合香も3年半の闘病の末に亡くなった。姉の早苗は、妹の死にただ悲しみを覚えるばかりで実感が湧かず、葬儀の手配もままならなかった。そんな早苗を見た恋人の晴紀は、死体の写真を撮る仕事があるという噂があることを思い出す。頬が痩せこけ、目の回りが黒ずみ、無理やり見せた笑顔が最後の写真ではあまりにも忍びないと早苗にすがられ、晴紀が探し当ててきたのが「空倉(くうくら)葬儀」という変わった名前の葬儀社だった。 会社に到着すると、肝心の写真を撮ってくれるカメラマンはまだ20歳そこそこの若いロシア人女性だった。硬直をほぐされ、百合香が好みそうなピンク色のウェディングドレスを着せられ、ヘアメイクを施された百合香は、生きている人間との違いが分からないほど美しく仕上がった。撮影が終わり、葬儀が執り行われ、いよいよ火葬の段になった途端に急激に悲しみがこみ上げてきた早苗だったが、葬儀社の人々らの温かい言葉に支えられ、葬儀を終える。それから1週間ほどが経ち、百合香の写真を収めたアルバムが届く。その出来映えに満足し見入っていると、百合香が入院していた病院の村浜看護師長が訪ねてくる。師長は言いにくそうにしながらも、百合香は本当に火葬されたのか、そこにあるのは本当に百合香の遺骨なのかと尋ね、15年前に自身が体験したある出来事について語り始める。15年前、別の病院に勤めていた時に警察官に見せられた身元不明の遺体の写真が、前年に亡くなった彼女の担当患者の女性といくつもの特徴が一致し、顔もそっくりで、その女性の葬儀を請け負ったのが空倉葬儀だったという。実は早苗は、百合香の遺骨に混ざっていた小さなネジに疑問を持っていた。師長にそれが骨折用のネジではないかと聞かされるが、百合香は骨折をしたことがなく、優しかった葬儀社の人たちを信じたい気持ちが一気に不安感へと変わっていった。 晴紀が見つけたホームページにもう一度アクセスしようとするが、ページ自体が見つからず、名刺には電話番号も載っていなかった。不安を払拭するために、もう一度会社を訪れた早苗は、出張中のはずの晴紀の車を駐車場に見つける。社員に拘束された早苗は、全裸で睦み合う男女の映像を見せられる。よくよく見れば、獣のごとく激しく腰を動かしているのは紛れもなく晴紀で、その下で犯されているぐったりとした女は、百合香の遺体だった。晴紀は、死体を愛好する倒錯者だったのだ。拘束され血を抜かれながら、自分も朽ちない死体人形にされ慰み者にされるのだろうかと絶望しながら、それでも自分もウェディングドレスを着せてほしいなどと考えながら、早苗の意識は遠のいていった。 百合香(ゆりか) 高校卒業間際に発病し、約3年半の闘病生活を経て、22歳で死去。 早苗(さなえ) 百合香の姉で、唯一の肉親。 晴紀(はるき) 早苗の恋人。商社マン。友人の見舞いに訪れた際に、間違えて百合香の病室に入ってしまったのが早苗との出会い。 八嶋 孝吉(やしま こうきち) 「空倉(くうくら)葬儀」社員。50代くらいの柔和な顔つきの男性。 浦井 秀子(うらい ひでこ) 「空倉葬儀」代表取締役。身長が140cmにも満たない、小柄だが品のある顔立ちの女性。ソーニャの通訳も務める。 ソーニャ・ミハイロゼスカヤ 「空倉葬儀」専属カメラマン。ロシア人。 村浜(むらはま) 百合香が入院していた病院の看護師長。
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