本権取得的効力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/29 10:24 UTC 版)
占有者に本権取得を認め、また、善意の占有者の保護を図るものである。 無主物先占所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する(239条1項)。 「無主物先占」を参照 果実の収取と償還善意占有者の果実の収取 善意占有者は果実収取権を有する(189条1項)。不当利得の特則でありその適用は排除される。この規定については善意占有者の果実収取権を認めたものとみる説と消費した果実の返還義務が免除されるにすぎないとみる説が対立し、消費されていない果実の扱いをめぐって異なる結論となる。 善意占有であればよく過失の有無を問わない。ただし、過失のある場合に不法行為責任を問いうるか否かについては否定説と肯定説がある。 本来的に果実を収取する権利を有しない占有者(動産質権者、留置権者、受寄者など)については189条の適用はない(通説)。また、不当利得の運用益については189条にいう「果実」ではなく703条によって処理される(最判昭38・12・24民集17巻12号1720頁)。 悪意占有者の果実の償還 悪意占有者は果実を返還し、既に消費し過失によって損傷し、または収取を怠った果実の対価を償還しなければならない(190条1項)。瑕疵ある占有者(暴行もしくは強迫または隠匿によって占有をしている者)も悪意占有者と同様である(190条2項)。また、善意占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは訴え提起時から悪意の占有者とみなされ、提訴後に得た果実の返還をしなければならない(189条2項)。190条の規定は不法行為責任を問うことを排除するものではないが(通説・判例。大判大7・5・18民録24輯982頁、大判大7・3・3民集11巻274頁。190条は果実・対価の償還の範囲という点については不法行為責任の特則となる)、果実やその代価に関して悪意者であるとの理由のみで当然に不法行為が成立するわけではない(最判昭32・1・31民集11巻1号170頁)。 占有者の損害賠償占有物が占有者の帰責事由により滅失・損傷した場合には、悪意占有者の場合にはその損害の全部を、善意占有者の場合には現存利益の限度で賠償する義務を負う(191条本文)。ただし、所有の意思のない他主占有の場合には善意占有者であっても全部の賠償を要する(191条但書)。滅失・毀損には物理的毀損のほか法律上返還不能となった場合(第三者への売却など)を含む。 費用償還請求権占有者は占有物の回復者に対して、占有物の保存のために支出した必要費や改良のために支出した有益費などの償還を請求できる(196条1項本文、2項本文)。必要費は、占有者が果実を取得したときは占有者の負担になる(196条1項但書)。有益費は、支出した金額又は増価額を、回復者の選択に応じて請求できるが、悪意占有者からの有益費の償還については、回復者の請求により裁判所はその償還について相当の期限の許与することができる(196条2項但書)。
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