日本住血吸虫の感染源としての用水路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 05:55 UTC 版)
「用水路」の記事における「日本住血吸虫の感染源としての用水路」の解説
生態系や生物多様性の保全という観点とは別に、日本の用水路のコンクリート化は単なる自然破壊ではなく、明治以前には原因不明の風土病として恐れられた住血吸虫症の原因寄生虫である日本住血吸虫の撲滅のために行われた施策である事を理解する必要もある。 詳細は「地方病 (日本住血吸虫症)」を参照 住血吸虫症は、通年で水に浸り続ける素堀の用水路に生息する特定の巻貝を宿主とする吸虫類が、用水路や水田内に入った人間やその他の大型哺乳類に寄生する事で発症する病気である。感染の度に肝臓に障害が蓄積し、最終的には肝硬変や肝癌により死に至る。日本を含む東南アジア全域に分布する寄生虫であり、今日でも東南アジアにおいては深刻な風土病として猛威を振るい続けているものである。 根本的な対策は「水田や用水路には素足では入らない事」しか無い(それが高じて「流行地には娘を嫁に出すな。」という地域差別にまで発展したことを伺わせる話も伝わる)とされていたが、1913年に九州大学の宮入慶之助が日本住血吸虫の中間宿主である巻貝のミヤイリガイを特定した。それまで素堀で作られていた用水路をコンクリートのU字溝化してミヤイリガイの生息しがたい環境を作る事、特に住血吸虫症の蔓延が深刻な地域では殺貝剤を使用することにより、ミヤイリガイが生息できない環境を造ることが第二次世界大戦前から行なわれ始めた。 日本では第二次世界大戦後に圃場整備が進んだことから、ミヤイリガイも日本住血吸虫病も瞬く間に減少し、1978年以降新規患者の報告はなくなった。1996年2月、かつての最大の感染地帯であった山梨県は日本住血吸虫病流行の終息を宣言。最後の感染地帯であった福岡県筑後川流域でも1990年に安全宣言を、2000年に終息宣言を発表した。 これにより、日本は住血吸虫症を撲滅した唯一の国ともなった。
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