日本における資格制度の変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 01:34 UTC 版)
「通信士」の記事における「日本における資格制度の変遷」の解説
日本では1915年制定の無線電信法により、国家が直接管理しない私設の無線通信が認められた。これに従事する者として法定されたのが、日本における無線通信士の始まりで、現在の国内および当時の勢力圏に制度が適用されていた。通信士に対する需要が高まると資格取得のための学校も設立され、日本においても無線通信士という技術専門職が確立した。 有資格者の職場は殆んどが私設の無線局で、船舶を中心とした移動体やそれらと通信する陸上局が多かった。ただ全ての通信士がこの資格を必要としたわけではなく、逓信省や陸海軍の場合は、所定の教育訓練を受けた者なら無資格でも従事できた。また私設局であっても、特に陸上の局でモールス通信を行なわない場合は無資格で電波を出せることが多かった。 逓信省が提供する業務を利用し難い場合に限り、私設の設備により主に設置者のための電気通信を行なうことを認める、という制度は、電波の政府管掌を規定(第1条)した無線電信法が戦後の1950年(昭和25年)に廃止されるまで継続した。この制度においては、無線通信士も特定の条件下においてのみ有効な国家資格であったといえる。 戦後の1950年に施行された電波法の目的は電波の有効利用であり()、自衛隊の一部を除く全ての無線局は共通の法制度下にある。通信に携わる者についても公設私設による違いはなく、その資格は条文が直接規定している。また設備の保守管理にも有資格者を要するのが基本となるなど、無線従事者の種別は通信士だけではなくなった。資格取得は試験合格を経るのが基本だが、所定の教育課程終了による取得も多い。なお無線局の様態によっては、執務に無線従事者以外の資格を要する場合があり、操作範囲などが事実上制限されてしまうこともある。 20世紀末になると特殊な技能を有さなくとも操作できる設備が増え、無資格で運用できる無線局が増加した。資格を要する場合も、無線を必要とする局面が増加したこともあり、操作者の全員に資格の所持を求めるのは非現実的になってきた。日本の無線関係の資格は、1980年代までは基本的に業務独占資格であったが、1989年の電波法改正においては必置資格としての面を強めることとし、その無線局に所属する有資格者のうち主任無線従事者として選定された者の監督下ならば、無資格者であっても運用を行なえる制度が導入された。
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