施設の接収
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 05:34 UTC 版)
施設の接収については官民の別なく、段階的かつ一律に行われた。その基準は電力管理法と同時に発令された勅令第575号である「電力管理法施行令」によって定められている。すなわち、 認可出力が5,000キロワットを超える水力発電所およびダム。 認可出力が10,000キロワットを超える火力発電所。 最大電圧が10万ボルト以上において使用される送電施設。 以上三項目に該当する発電・送電施設は一切の例外なく日本発送電が管理を行い、また施工中であったものに関しても補償費による対価を既存の電力会社に支払ってこれを所有することになった。送電設備のうち40,000ボルト以上10万ボルト未満のものについても、その重要性に応じて接収されていった。さらに各電力会社が持つ既得発電用水利権自体はそのまま保持が認められたものの、5,000キロワット以上の水力発電所を新規に建設することは日本発送電の独占業務とされてしまい、事実上民間企業は大規模水力発電事業に携わることが出来なくなった。加えて日本発送電株式会社法第24条において、同一地点で開発が競合した場合に水利権が両立しないケースには、各電力会社が所有していた既得水利権も行政処分によって取り消されてしまうと規定されていた。こうして民間の電力会社は新規の電力開発という最重要業務を奪われた形になった。 例外として企業の自家発電については当初は接収の対象から外されるケースがあった。例を挙げれば王子製紙が所有する千歳発電所群、日本軽金属が所有する富士川水系の水力発電所群などがこれに当たる。このうち王子製紙は当時石狩川水系の千歳川と雨竜川に水力発電施設を管理・建設していたが、雨竜第一ダムなどの雨竜川水系については電力管理法の対象として接収された。だが千歳川の水力発電所群については、仮に接収が行われた場合苫小牧工場の操業が停止するとして逓信省に必死の折衝を行った。この結果千歳川の発電所群は接収を免れた。日本軽金属についても、アルミニウム精錬に支障を来たすとして接収は免れている。しかし配電統制令が発令されるとそれらの例外もほとんど各配電会社に接収され、王子製紙や日本軽金属などを除けば出力が1,000キロワット以下の小規模発電所以外はことごとく接収されている。 さらに発電施設に付随する鉄道事業なども接収の対象となった。例えば1942年(昭和17年)に富山県電気局(現在の富山県企業局)の電力事業を接収した際、富山県営鉄道から千垣駅~粟巣野駅間の路線も接収した。だがこの路線は翌年富山地方鉄道に譲渡している。現在の富山地方鉄道立山線の一部がこれにあたる。
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