文学から映画の成功へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 08:06 UTC 版)
覆面盗賊は発表されるや凱歌を上げ、大衆だけでなく文学者や芸術家にも愛好された。ブレーズ・サンドラールはギヨーム・アポリネールの『レ・ソワレ・ドゥ・パリ』誌に「ファントマは現代のアエネーイスである」と書いた。アポリネール、マックス・ジャコブ、ロベール・デスノス、ジャン・コクトー、シドニー=ガブリエル・コレットや、ルイ・アラゴンなどシュルレアリスト達が競って、黒タイツ(夜の悪事の定番)と黒の狼マスク、燕尾服にシルクハットを纏い、血濡れのナイフをかざしてパリを股にかける犯罪者(第1巻の有名なカバーで、錠剤の広告に触発されて繰り返された)を讃えた。 ファントマは今日では、映画三部作のジャン・マレーとルイ・ド・フュネスによる冒険コメディーを通した一般的なイメージでよく知られている。しかし映画での、盗賊の蒼いマスクと技術装置(空飛ぶシトロエン・DSなど)、曖昧なファンドールとヒステリックで不器用なジューヴ(マスクをしたファントマとジャーナリストのファンドールの2役を同じ俳優ジャン・マレーが演じていた)は、スーヴェストルとアランの小説の設定である、変装した主役のただ一つの本当の性癖とは違っていた。ルイ・ド・フュネスの1964年を境とする大ヒットにより、映画第2作と第3作では明らかにルイ・ド・フュネスの演じるジューヴが主役となり、ジャン・マレー演ずるうちのファンドールは単なる脇役となっている。もちろん同じくマレーの演じるファントマが最大の敵役として描かれることには変わりない。なお、映画内では「ファントマス」と発音される。 ライバルのアルセーヌ・ルパンとは違い、発表以来様々に脚色されたプロジェクトである。原作及び1910年代の無声映画のトーンに忠実に作られた、1970年代のクロード・シャブロルとフアン·ブニュエルによる、ファントマ役のヘルムート・バーガー、ジャック・デュフィロ(Jacques Dufilho)、ゲイル・ハニカット(Gayle Hunnicutt)はテレビ・シリーズとして成功。しかしながら制作したフランスと西ドイツ以外の、東側の国々を含む欧米各国で放映されたにも関わらず、定着した「ファントマ=1960年代のコメディー映画シリーズ」の印象を覆すまでには至らなかった。2000年代にリメイクが計画された際にも、内容は1960年代のコメディー路線を取る予定であった。
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