救援・車とは? わかりやすく解説

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救援車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 07:55 UTC 版)

救援車(きゅうえんしゃ)とは、鉄道事業者が使う事業用鉄道車両の一種である。災害鉄道事故除雪現場などに出動し、枕木等の応急復旧資材や工作機械の保管・運搬、作業員の休憩所代わりに用いられる。

概要

日本国有鉄道(国鉄)では、戦前から職用車の一種として「非常用車」(客車) や救援車代用貨車が存在していたが、1953年(昭和28年)6月の車両称号規程改正により独立した車種として制定された。従来、鉄道事故の復旧作業は発生後に復旧機材を積んだ自動車や列車で現場へ向かっていたが、これでは手間がかかること、更に当時はまだ道路網が発達しておらず、自動車利用の場合は現場への移動だけでも時間がかかることも少なくなかった。

そこで、事故が起きてから準備をするのではなく、事故発生時に迅速な復旧作業が出来るよう、予め機材を積んだ鉄道車両を常備しておくという発想が救援車の元になっている。

車両

ほとんどの場合、営業用としては古くなった車両を改造して製作される。また、廃車した車両の台車や機器などを用い、車体を新製する場合もある。

車内のスペースは、復旧用資材・機材の積載スペース、作業員の休憩スペース、簡易な厨房設備、トイレなどからなる。スペースの配置や寸法については、車種や配置先の実態などにより大きく異なる。

搭載機材

地域や車輌個体等による差もあるが、おもに以下のような物を搭載していた。

出動機会

現在では道路網が充実したことや、ダイヤの過密化などにより、あらかじめ復旧用資材をコンテナに搭載させて車両基地に常駐させておき、災害などの緊急時にはそれを機動性のあるトラックに載せて現地に駆けつける場合がほとんどで、また車両故障による出動も近くの営業車両を運転打ち切りにして行なうか最寄りの車両基地の予備車を使って行われている。このため、救援車が出動する機会は道路から離れた場所での災害、事故に限られており、実際に使用することは極めて稀な事態ともいえる。実際に都心部では廃車が進み、必要最小限度の保有となっており、残存する車両も側線で、中には朽ち果てるように留置されているものもある。

事業者別の救援車

国鉄・JR

国鉄およびJR各社における記号は「エ」。ほとんどが旧型客車や用途廃止された荷物車郵便車を流用し、改造している。このため種車はバラバラで、同じ形式でも外観や内部の形状が異なる場合が多い。窓は、元の種車と比べると、塞がれるなどの改造が施されているためピッチは不連続になっている。また、側扉は片側2以上が配置される。扉や窓に鉄格子が嵌っていることも多いことから外見は荷物車に似る。塗装色はぶどう色2号。側面に白文字で「救援車」と書かれている場合もある。

国鉄末期の1986年(昭和61年)のダイヤ改正で郵便荷物輸送が廃止になり、製造から10年に満たないにもかかわらず余剰となった50系客車のマニ50形やスユニ50形を救援車代用として使用することになったため、車齢の古い旧型客車の救援車は一掃された。なお、救援車代用貨車は現在も各所に配置されているものの、こちらも救援車代用コンテナに置き換わっている。

主な救援車

過去に存在した国鉄の救援車
電車
客車
貨車
新幹線車両

京浜急行電鉄[1][2][3][4]

京浜急行電鉄には初代1000形の廃車発生部品を流用したデト17・18形各2両の合計4両が在籍する。1979年から1990年まではデト20形2両が、1990年から2010年6月まではクト1形2両が救援車として使用されていた。

相模鉄道[5]

相模鉄道は編成組換で余剰となった旧7000系を改造したモヤ700形4両を保有する。1975年から2007年まではモニ2000形3両が救援・事業用車として使用されていた。

阪神電気鉄道

阪神電気鉄道では、旧型電車からの転用ではなく1987年に新造された救援車が存在する。両運転台をもつが、制御車であり動力装置は持たず単独運転することはない。営業用車両の前後に連結されて、事故現場などへ復旧資材の運搬等を行う。外観はコバルトブルーで正面にバーミリオンの赤帯が入る。

  • 110形(110号とも)
  • 155形(廃車)

阪急電鉄[6][7][8]

阪急電鉄では920系を改造した4050形救援車を4両保有している。動力装置は持たず、営業用車両で救援車を牽引する。

山陽電気鉄道

山陽電気鉄道では3000系付随車3550形(2000系からの編入車)を改造した1500号救援車を保有していた。運転台・動力装置を持たない付随車であり、使用時は3000系又は2300系に連結して使用される。推進運転で現場に向かうこともできるよう、付随車ながら両端に前照灯(作業灯兼用)・連絡通話装置・保安ブレーキスイッチ・ATS受電器・警笛を備えていた。東二見車両基地に配置されていたが、2010年6月30日付けで廃車された。

西日本鉄道[9]

西日本鉄道では筑紫車両基地5000形を改造した3両固定編成の900形911Fが配置されている。

脚注

  1. ^ 平成~令和 | けいきゅうでんしゃはくぶつかん | 京浜急行電鉄(KEIKYU)”. 京浜急行電鉄. 2025年7月18日閲覧。
  2. ^ KEIKYU YELLOW HAPPY TRAIN 京急イエローハッピートレイン | 京急の電車紹介 | 京浜急行電鉄(KEIKYU)”. 京浜急行電鉄. 2025年7月18日閲覧。
  3. ^ 京急電車の黄色い電車の中でも、とりわけ珍しい存在であった救援車をお届けします。 形式はクトで、クト1形とクト2形の2両存在していました(画像はクト1形.2010年6月まで運用)、両車共に両運転台がある車両で、この2両にはモーターがついておらず、走行する時は他の形式と連結して本線を走行していました👮”. 2025年7月18日閲覧。
  4. ^ デト大集合「デトフェス!!」 | ニュースリリース | 京浜急行電鉄(KEIKYU)”. 京浜急行電鉄. 2025年7月18日閲覧。
  5. ^ 相鉄が「見たら幸せになれる電車」の展示会…モヤ700系事業用車 11月19日”. レスポンス(Response.jp) (2022年11月29日). 2025年7月18日閲覧。
  6. ^ あの黒い阪急電車は何? | 2020年2月 | 阪急沿線おしらべ係 │ 阪急電鉄株式会社”. 阪急電鉄. 2025年7月18日閲覧。
  7. ^ 【黒い阪急電車!?】ご存知ですか?救援車。館長も驚きの仕組みがたくさん!救援車をよく知るゴーシーさんに聞いてみよう!!【前編】”. 2025年7月18日閲覧。
  8. ^ 【黒い阪急電車!?】いよいよ救援車の車内へ潜入!車内に残る920系の名残り。レアな運転台で館長が・・・!?【後編】”. 2025年7月18日閲覧。
  9. ^ 西鉄版ドクターイエロー!出動ゼロだが、備えのために走る|おすすめ記事|くらし×防災メディア「防災ニッポン」読売新聞”. くらし×防災メディア「防災ニッポン」読売新聞. 2025年7月18日閲覧。

関連項目


救援車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 02:23 UTC 版)

国鉄10系客車」の記事における「救援車」の解説

スエ38形 - 1969年 (8)大宮工場カニ38形から改造された救援車。 改造後佐倉客貨車区配置され待機していたが、同区廃止に伴い1981年廃車され、解体処分されている。 なお、該当車両は1両 (8) のみ。他に7両 (1 - 7)存在したオハ31系属する。 国鉄オハ31系客車#救援車のスエ38形の項目も参照

※この「救援車」の解説は、「国鉄10系客車」の解説の一部です。
「救援車」を含む「国鉄10系客車」の記事については、「国鉄10系客車」の概要を参照ください。

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