政争と危機管理チーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 02:26 UTC 版)
高まるドイツ赤軍の脅威を前に、与野党の論争が激化した。野党であるキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟(CDU/CSU)の右派陣営は、ドイツ社会民主党(SPD)と自由民主党(FDP)の左派・中道連立政権には極左テロリストとの思想的な近接性があり、ひそかに共感しているのではという疑いを提起した。これに対し連立政権側は、野党が危機をヒステリックに煽ることで政局を優位に操り、与党となった暁には連邦共和国をさらなる警察国家化に導くつもりなのではと非難した。 しかし同時に与野党は協力して危機管理にあたっていた。シュライヤー誘拐の翌日の9月6日より、危機管理のために政府内に2つの組織が結成された。ヘルムート・シュミット首相を中心とするSPD・FDP内閣の中枢メンバーと、財界・司法界の代表により結成された小規模チーム(Kleine Lage)が対策会議を毎日何回も実施し、これに与野党の重要政治家やRAFメンバーを収監する刑務所のある各州の首相たちを加えた大規模危機管理チーム(Große Krisenstab, GKS, または Große Lage)が週に数回招集され、連邦政府や各州の捜査機関、法執行機関、議会の行動を調整・決定していた。この危機管理組織はドイツ基本法にも定めのない超法規的な組織であり、通常の手続きを省略して各政党間や政府各機関の即時かつ緊密な意見交換を行い意思を決定していた。後に多くの著者が述べるように、西ドイツは非常事態宣言を発令しないまま、事実上の非常事態(例外状態)に突入していた。 このチームの下でRAFに対する大規模捜査が行われたほか、刑務所にいるRAFメンバーに対して刑法の緊急避難条項に基づいて、外部との面会・他の受刑者との接触・テレビ視聴・ラジオ聴取などを禁ずる接触禁止命令を出し、これを合法化する接触禁止法が連邦議会を最速で通過して発効した。メディアに対しても統制が行われ、国内メディアはRAFから政府への声明文などを報道しない自主規制状態に入った(国外メディアには統制は届かず、シュライヤー誘拐事件やRAFからの声明に対する続報が行われた)。
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