放射強制力とは
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 08:45 UTC 版)
地球の気候を左右する気候因子のうち、地球の気候システムによるものを除いた、太陽放射や温室効果などを外部因子という。この外部因子にはそれぞれ、光を吸収しやすい、光を反射しやすい、熱を吸収しやすい、熱を放出しやすいなどの性質があり、大気や地面・海洋が蓄える熱量を左右し、気温や海水温に影響を与える。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は1994年の第1次評価報告書で、「対流圏の上端(圏界面)における平均的な正味の放射の変化」を放射強制力と定義し、現在もこの定義が使われている。つまり、気温が一定に保たれている状態(IPCCの予測では1750年)を基準として、地球から宇宙への放射によって地球が持つエネルギーを減らす(気温を下げる)外部因子を負の放射強制力、宇宙から地球への放射によって地球が持つエネルギーを増やす(気温を上げる)外部因子を正の放射強制力という。 IPCC第4次評価報告書によれば、放射強制力は、対流圏での循環バランスが取れた状態を初期状態とし、これに何らかの原因によってずれが生じたとき、成層圏の気温の変化を考慮したうえで、再び対流圏での循環バランスが取れるようになるまでに変わる放射の量として計算される。 例を挙げて言えば、バランスの取れた普通の気候が続いている中で、突然一酸化二窒素の濃度が2倍になったとする。すると、気温が上昇して大気の循環が乱れる(実際にはさらに複雑な変化が起きるが、ここでは単に「大気の循環が乱れる」とする)。この乱れは時間をかけてバランスの取れた気候へとなっていくが、バランスの取れた気候となったとき、対流圏の上端では以前に比べて放射の量が増えている。この増えた量が放射強制力となる。このとき、成層圏の気温の変化を考慮しなかった場合は瞬間的放射強制力と呼び区別される。ちなみに、気温が上昇している段階では地球に入るエネルギーが出るエネルギーを上回っているが、バランスの取れた気候となった時点で両者は均衡する。この過程については温室効果を参照のこと。 研究の進行や気候モデルの発達により、報告書ごとに少なくとも人為起源の放射強制力については、数値の信頼性は高まっているとされている。IPCC第4次評価報告書では、「1750 年以降の人間活動は、世界平均すると温暖化の効果を持ち、その放射強制力は+1.6[+0.6~2.4]Wm-2 であるとの結論の信頼性はかなり高い」とされている。注:Wm-2はW/m2と同義。
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