損害補償裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 03:58 UTC 版)
「中華航空140便墜落事故」の記事における「損害補償裁判」の解説
犠牲者87名の遺族と生存者1名からなる遺族の統一原告団は、中華航空とエアバス社に総額196億2020万円の損害賠償を求める民事訴訟を1995年11月に提訴した。中華航空操縦乗員による操縦ミスとエアバス社の設計上の欠陥が複合したため事故が発生したとする主張から、原告数および請求額が日本の裁判史上最大の訴訟となった。 原告側は中華航空に対して「中華航空は故意的ともいえる重大な過失によって事故を起こした」として、航空事故による被害補償を定めたワルソー条約で例外的に適用されない「無謀に、かつ損害の恐れを認識して行った」場合に当たると主張した。エアバス社に対しては「機体に手動操縦と自動操縦が競合する欠陥があり、同様の事故が何度も発生して危険性を認識しながら何ら改善措置を講じなかった製造物責任がある」と主張した。「犠牲者の死の恐怖や遺体の損傷などの遺族の精神的苦痛が甚大である」として犠牲者1名あたり1億円の慰謝料を求めた。 中華航空は「誤操作は不可抗力で、エアバス社のマニュアルに欠陥があった」と主張し、エアバス社は「日本の裁判所は当該訴訟の管轄権を有さず、事故原因は機体の欠陥ではなく、操縦乗員の重過失が原因で事故の予見可能性は全くなかった」と主張した。 2003年(平成15年)12月26日に名古屋地方裁判所は「操縦乗員が墜落の危険があることを認識しつつ無謀な行為を継続したことが事故に繋がった」として、改正ワルソー条約25条の責任制限規定(20,000USドル)の適用が排除される「無謀に、かつ損害の恐れを認識して行った」行為に相当するため中華航空は損害の全額を賠償する責任があり、統一原告団232名へ総額50億3297万4414円を支払うように命じた。 中華航空が控訴を見送り、名古屋地裁判決を受け入れることを表明したため、原告団の大半は控訴を取り下げて確定した。原告のうち29名が控訴して名古屋高等裁判所で訴訟が継続していたが、2007年(平成19年)4月に中華航空が事故責任を認め、解決金を支払う調停が成立した(金額は公表されておらず、不明)。 エアバス社への請求は、「事故が操縦乗員の極めて稀な行為によって起こされたものであり、システム設計に欠陥があったとはいえない」として製造物責任を認めず請求を棄却した。統一原告団とは別に起こされた事故の遺族による裁判も、同様の主旨の判決が出されて請求を棄却した。
※この「損害補償裁判」の解説は、「中華航空140便墜落事故」の解説の一部です。
「損害補償裁判」を含む「中華航空140便墜落事故」の記事については、「中華航空140便墜落事故」の概要を参照ください。
- 損害補償裁判のページへのリンク