抜歯が必要な場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 04:47 UTC 版)
現代の人間(特にアジア、アメリカ、ヨーロッパ系の人種など)は顎が小さく、親知らずが生えるための十分なスペースがないことが多い。このため、横向きに生えたり傾いて生えてきたりする場合がある。このような場合は歯ブラシが入りにくく、虫歯や歯肉炎になりやすい。最悪の場合には親知らずから入り込んだ菌による炎症の影響が心臓付近まで到達し、死亡することがある。 親知らずが問題を起こしている場合には、抜歯を勧められる。年齢が上がると顎骨と歯根が癒着してくることがあり、抜歯が困難になるので、若いうちの抜歯が勧められる。 抜歯の難度は上顎より下顎が難しく(顎部〈特に下唇部〉の神経が近いため)、まっすぐ生えているものより横向きに生えているもののほうが難しい。最も困難なのは下顎で横向きに生えている歯であり、この場合には歯茎を切開して顎骨を少し削り、表面に出ている歯を割って取り出したのち、埋まっている歯を抜き取る。このような難易度の高い症例では一般歯科での抜歯が難しく、総合病院の口腔外科を勧められることが多い。また、下顎部に歯全体が隙間なく埋没しているケースも難易度が高いとされる。 なお、顎骨にほぼ埋まっている状態の親不知は埋伏智歯と称される。 局所麻酔は、下顎に対しては伝達麻酔の一種である下顎孔伝達麻酔が使われる事が多い。顎の太い神経近くに麻酔を注入するため、通常の虫歯治療で用いる浸潤麻酔よりも麻酔の強度、範囲、持続時間が大きい特徴がある。そのため麻酔の効きにくい奥歯の治療やインプラントで採用される事が多い。ただし骨や周辺の組織に強い炎症があったり、根の周囲に膿が溜まっている場合などは、組織内が酸性に傾き、麻酔が効きにくい場合がある。 一度に複数本の抜歯(例えば、親不知4本を一度に抜歯する必要があるケースなど)が必要な場合には全身麻酔を行い、手術室で行うケースも多い(口腔外科外来では不可能であるため、入院が必要となる)。ただし、1本の抜歯であっても、患者が局所麻酔で抜歯するのに不安を訴えたり、埋まっている位置が極端に深いなどの理由で抜歯に時間がかかる場合には、患者との合意が得られれば入院したうえで全身麻酔を施し、手術室で行うケースもある。 局所麻酔を用いた一般的な治療方法における治療費の目安として、日本ではレセプトの3割負担でおおよそ1本5,000円から6,000円程度。米国においては、簡単な抜歯は75–200米ドル。軟部組織の埋伏タイプの外科的抜歯は225–600米ドル。埋伏歯の場合は、250–500米ドル。いずれも保険適用なしの金額だが、アメリカの殆どの歯科任意保険では親知らずの抜歯費用もカバーしており、保険加入していれば実際の負担は2割程度となる。全身麻酔を用いた抜歯の場合は、より多額の費用がかかる。
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