抗甲状腺抗体陽性小脳失調症(橋本脳症)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/07 14:33 UTC 版)
「自己免疫性小脳失調症」の記事における「抗甲状腺抗体陽性小脳失調症(橋本脳症)」の解説
詳細は「橋本脳症」を参照 歴史的には1966年に英国のBrainらが橋本病に伴い、意識混濁、幻覚、片麻痺、失語など精神神経症状を呈した48歳の男性患者を報告したことにはじまる。この患者は甲状腺ホルモンの値は正常であるにも関わらず、精神神経症状を繰り返し症状の変動と関連してサイロイドテストの異常や髄腋蛋白の上昇が認められた。甲状腺生検では橋本病に特徴的な病理所見が得られた。甲状腺ホルモンの補充では症状の改善が認められず粘液水腫性脳症とは異なる自己免疫的な機序を背景とした脳症の存在が示唆された。1988年にBehanらが急性散在性脳脊髄炎患者を免疫学的に解析し、橋本病に伴う自己免疫性脳症の一群があることを改めて指摘した<。1991年にShawらが抗甲状腺抗体陽性でステロイド反応性有する5名の脳症患者を報告した。このときはじめて「Hashimoto encephalopathy」という新しい疾患概念が提唱された。Shawらの基準では精神神経症状(脳症)の存在、抗甲状腺抗体の存在、ステロイドに対する反応性という3点を強調している。この診断基準の問題点は甲状腺自己抗体の疾患特異性である。抗甲状腺抗体の陽性率は日本人全体で5\25%に達するため診断の契機になりえても確定診断になりえない。しかし抗NAE抗体は橋本脳症の診断感度は50%で特異度が91%であり感度に問題がある。抗甲状腺抗体が特徴の橋本脳症でも小脳失調を示すものが知られている。福井大学の調査では16%が小脳失調型である。Shawらの基準を満たした小脳失調型橋本脳症13例の検討例の報告がある。抗NAE抗体陽性例は8例で陰性例が5例であった(陽性率62%)。62%が慢性進行性の経過であり、半数でSPECTで小脳の血流低下があり脊髄小脳変性症との類似点が認められた。眼振が17%と乏しく、小脳萎縮も38%と乏しかった。免疫学的治療の効果は著効が4例、中等度効果が4例、軽度効果が5例であった。三苫らは抗NAE抗体陽性の小脳失調型橋本脳症の患者の髄腋をラットの小脳プルキンエ細胞に灌流しパッチクランプ法を用いてプルキンエ細胞伝達の阻害を明らかにした。
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