批判・疑問・危険性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 20:54 UTC 版)
現代の中国人において、この中華思想(あるいは華夷秩序)が理解されていると直断ずるには疑問があるとする説がある。元外交官の宮家邦彦は、現在の中国では教科書に「中華思想」がなく、学術的に研究・考証する専門家もいないされている、としている。その上で、これらは中国に限らずアラブ諸国などの開発途上国に概ね共通する以下のような「対先進国劣等感」の裏返しとした。 世界は自分を中心に回っていると考える 自分の家族・部族以外の他人は基本的に信用しない 誇り高く、面子が潰れることを何よりも恐れる 外国からの経済援助は「感謝すべきもの」ではなく、「させてやるもの」だと考える 都合が悪くなると、自分はさておき、他人の「陰謀」に責任を転嫁する ところがあろうことか夷狄であるはずの欧州列強にアヘン戦争で大敗してしまった。そのため洋務運動が起き、とりわけ中体西用によって国力回復を目指した時点では近代化の手本をヨーロッパに求めたため、そこにはあからさまに西欧を卑下する態度は見られないとする。 ただし概ねこうした運動は、時の支配者である「満族」から開放し、かつて中華思想を奉じた「漢族」に取り戻すための滅満興漢を目的としたものであり、それは現在でも国名を「中華」にこだわることなどに、時の改革者によって思想は変貌しつつ、いまだに中華思想と完全に決別できていないことが認められる、とする。アヘン戦争敗北から長い歳月を経っても、いまだに欧米諸国に対しては新しい中国の国家像や国際秩序モデルを示しえているとはいえず、この途上国共通の「劣等意識」こそが根底にあるのでは、と論じている。
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