弦楽器の調律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 20:14 UTC 版)
弦楽器における調律は、特に調弦(ちょうげん)と呼ばれる。糸巻きを回すことによって弦の張力を変化させ、開放弦の音高を変える。普通、最初にイ音で基準音を出し、ヴァイオリンとヴィオラとチェロではイ音の高さの弦をそれに合わせる。次に、5度調弦(隣接する弦同士の音程が完全5度である)であるので、隣接する弦を同時に弾き、高い弦の第2倍音と低い弦の第3倍音のうなりを用いて順次隣接する弦を調弦する。ただし、チェロではそれらの倍音をハーモニクス(フラジオレット)を使って出し、同音同士で調弦することも行われる。コントラバスでは多くの場合、最初に第2弦の第3倍音を基準音のイ音と合わせる。順次隣接する弦を調弦するが、4度調弦であるので、高い弦の第3倍音のフラジオレットと低い弦の第4倍音のフラジオレットを出して調弦する。 ギター・リュート属は、4度調弦、途中に長3度が含まれる。ハーモニクスを用いるのが好まれるが、一般にフレットは平均律を用いており、5フレット、7フレットのハーモニクスで調弦すると、高音弦になるにつれ、徐々に低く狂ってしまい、低音と合わなくなる(7Fハーモニクス---各弦の純正完全5度---は7F実音よりわずかに高い)。調子笛(ピッチパイプ)と呼ばれる、各弦の音高を出す笛を用いることも特に初心者の間では行われる。今日では、ギターなどのポピュラー系の楽器の調弦はチューナと呼ばれる電子機器を使うのが一般的である。エレクトリックギターの場合は直接ギターの出力を、アコースティック楽器の場合は内蔵マイクロホンや洗濯バサミ状のピックアップで拾った音を電子的に処理し、一番近い音名とそこからのずれをアナログメーターを模した液晶の表示器でセント単位で表示したり、「フラット気味」「丁度よい」「シャープ気味」などのLEDで表示する。電子チューナは、楽器の初心者にとって最初の難関である調弦のハードルを著しく下げるだけでなく、練習時や調弦の音を出しにくい、あるいは聞きにくいライブ会場での迅速かつ正確な調弦に大いに役立つ。ギターに限らず、琴や三味線など伝統的な楽器にも使われ、初心者用の「入門セット」に含まれていることが多い。 ギター、特にエレクトリックギターでイントネーションと言う場合は、フレットの誤差を補正することを言う。ギターはフレットが固定されているので、一度調弦をすると各フレットポジションのピッチは固定される。しかし、ネックの収縮や弦の伸び、温度などのさまざまな要因により、各フレットポジションでのピッチが必ずしも設計どおり(ほとんどの場合は平均律)になるとは限らず、開放弦で厳密に調弦しても例えば1オクターブ上の12番フレットの音がオクターブから微妙に上下にずれてしまうことがある。多くのエレクトリックギターは、ブリッジ部分にねじで弦の支点を弦長方向に微調整する機構を持ち、これをイントネーションと呼ぶ。
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