幼年学校の事件捜査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 01:18 UTC 版)
「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「幼年学校の事件捜査」の解説
宇宙暦793年/帝国暦484年4月~5月、帝都憲兵本部に出向中だったラインハルトが捜査した殺人事件。なお、この事件を描いた原作短編「朝の夢、夜の歌」は、当初は通常の単行本に収録されていなかったが、西暦2002年3月発行の徳間デュアル文庫「銀河英雄伝説外伝1・黄金の翼」に収録された。 世直しを志しているのに、今の腐敗した世で弱者に専横を振るう憲兵隊に出向させられたラインハルトは不本意だった。しかし、憲兵隊の方もまた、有能だが態度が悪く、しかも皇帝の寵姫の身内という扱いに困る立場にいるラインハルトに来られて迷惑していた(そもそも一般的な組織では、外部からの出向者自体が歓迎されない)。そんなとき、ラインハルトとキルヒアイスの母校である帝国軍の幼年学校で殺人事件が発生した。二人は期限付きで捜査の全権を与えられるという形で、体よく憲兵本部から放り出された。 懐かしの母校は変わっていなかったが、ラインハルトたちはその変わらなさに今の世の硬直と停滞と老朽を感じ、それを象徴する老校長シュティーガーの態度に失望しながら、捜査を開始する。被害者ライフアイゼンは、食糧倉庫に忍び込んだところを頭部を強打されて変死していた。成績は凡庸、学年首席の優等生ハーゼによると、生徒間に敵がいたかは不明だが、成績が上がらないのを己の努力不足ではなく他人のせいにする傾向があった。そして捜査が進展しない中、学年次席のベルツが刺殺され、第二の犠牲者となった。 奇妙なことに、ベルツの殺害現場では白壁に飛び散った血痕は拭い取られていたが、床の緑色のタイルに飛び散った血痕は拭い切れていなかった。そのことからラインハルトは、犯人は赤緑色盲ではないかと考える。それは、弱者や障害者を排除することを当然とするゴールデンバウム王朝下では本来生存さえ許されない、もちろん幼年学校から士官学校へ入って士官として栄達することなど許されない障害であった(原作発表当時の現実社会でも、赤緑色盲は社会的に大きなハンディキャップであった)。さらにライフアイゼンの死の真相と学年次席で第二の優等生のベルツが死んで誰が得するかを考え合わせたラインハルトは、ついに真犯人を探し出す。 だが、それは自分なりに最善を尽くしているつもりで邪道に走ってしまった弱者相手の、虚しくやりきれない勝利であった。せめてもの救いは、この功績でラインハルトたちが昇進し、危険でもやりがいのある戦場へと戻れることであった。 なお、この事件のさなか、ラインハルトの父セバスティアンが酒の飲みすぎで頓死した。アンネローゼは心から悲しんだが、ラインハルトは「これで姉上も俺たちも半分は解放された」と、安堵の色を見せた。
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