巨大な津波による深刻な被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:07 UTC 版)
「東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム」の記事における「巨大な津波による深刻な被害」の解説
東北地方太平洋沖地震によって極めて大きな津波が発生した。土木学会海岸工学委員会・地球惑星連合等の関係者らで組織された東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループの調査結果によると、東北地方太平洋沖地震による津波の最高遡上高は岩手県大船渡市綾里湾で確認された40メートルであり、岩手県北部から宮城県南部までの約200キロの海岸線で20メートルを越える津波の痕跡高、そして10メートルを越える痕跡高は南北約530キロで確認されている。また遠く四国では3メートル、九州でも1メートルの津波を観測しており、極めて広範囲に大きな津波が押し寄せていることが確認されている。また岩手県の一部では1896年の明治三陸地震津波とほぼ同規模の津波であったが、他の地域では明治三陸地震津波、そして1933年の昭和三陸地震津波を上回る規模の津波となっており、過去の津波と高さ、そしてその影響範囲の広さについて比較してみても、東北地方太平洋沖地震による津波の巨大さがわかる。 津波による甚大な被害の一例としては、まず約2万人に及ぶ死者・行方不明者の9割以上が津波による犠牲者である点が挙げられよう。また多くの家屋の流出、鉄道、道路等交通機関の破壊、561km2にも及ぶ浸水被害、更には東京電力福島第一原子力発電所で発生した重大な原子力事故の原因となる等、東北地方太平洋沖地震による津波災害は極めて深刻である。 東北地方太平洋沖地震の特徴の一つとして、他の地震被害と比較して津波被害の大きさが際立っていることが挙げられる。例えば地震によって大きな被害をもたらす要素としては、建物の崩壊、土砂崩れに伴う土砂災害等が挙げられるが、東北地方太平洋沖地震による地震動は周期0.5秒以下の極短周期の波が多く、建物に大きな被害を及ぼす周期1-2秒の地震波と、超高層ビルや石油タンクといった大構造物に大きな被害を与える、周期数秒以上の長周期地震動が比較的少なかったので、超巨大地震であった割には建物被害は比較的少なかった。また寒冷地である東北地方の家屋は比較的耐震性が高いと考えられ、そのことも建物被害が比較的少なかった原因と見られている。また今回の地震に最も隣接した東北地方太平洋沿岸付近にある北上山地や阿武隈山地では大規模な土砂災害の発生は極めて少なく、むしろやや離れた福島県白河市付近や栃木県那須烏山市周辺などで土砂災害が多く発生した。北上山地や阿武隈山地は地質的に土砂災害が発生しにくいことと、東北地方太平洋沖地震発生前に降水量が少なかったことが、地震の規模から想定されるよりも土砂災害が少なかった原因と考えられている。
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