小出本人に対するもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 17:15 UTC 版)
福島第一原子力発電所事故後に出版された『原発のウソ』に対しては次のような批判がなされている。 小出は発電所周辺の立ち入り禁止区域の汚染が酷く、住民の帰還ができないという前提を提示し「無人地帯に汚染されたゴミを捨てる「放射能の墓場」を造るしかないと思っています」と書いたが、これに対して東京工業大学助教の澤田哲生は、「煽る言説」と評し、放射性物質は同心円状ではなく扇状に分布しており「30キロ圏内でも汚染状況の軽微な地域があることは知られています」と反論している。 また、『原発のウソ』で小出は低線量被曝について「「人体に影響のない程度の被曝」などというのは完全なウソで、どんなにわずかな被曝でも、放射線がDNAを含めた分子結合を切断・破壊するという現象は起こるのです」と述べたが、松原純子(放射線影響協会研究参与)は長瀧重信(長崎大学名誉教授)とのやりとりの中で放射能に自然由来と人工由来の差がないという前提に立った上で、自然放射能が高い地域でも安定型染色体異常が増加した事実は確認されていないと主張し、「放射線の傷害は、一部は細胞レベルで修復されたり、アポトーシスで除去されたりします。そのような基礎的知識すら乏しい」と批判している。 また、『原発のウソ』にて「「低線量での被曝は、高線量の被曝に比べて単位線量あたりの危険度がむしろ高くなる」という研究結果が出てきました」「低線量での被曝では細胞の修復効果自体が働かない」というデータすら出はじめています。」と述べたが、澤田は「<研究結果が出てきた>とか<最近になってデータが出はじめている>と聞くと、一般の方は新しい研究結果が合意を得たかのような印象を受けます」とし、長瀧は「新しい研究結果の論文が発表されただけでは、その評価はまだ決まりません。(中略)自分に都合の良い論文を選択すれば、正反対の議論でも科学的と言える範疇です。個々の論文は国際的な機関で評価され、さらに合意が発表されるまでには、何度も世界各国の意見が聞かれます」と批判している。 この他、『原発のウソ』内で「LNTモデルを採用していない国際放射線防護委員会」と述べたことに対しては松原、長瀧、澤田等は「ICRPは、あくまで「防護」の目的でLNTモデルを採用しているのが特徴」「ICRPは、100ミリシーベルト以下の被曝量による影響は認められないという科学的事実の国際的合意を尊重しながらも、それ以下も放射線の影響があると仮定して防護を論じている」「平常時におけるICRPの「防護」の目的のための数値だけを意図的に持ち出し、人体に大変な「影響」が出ると不安を煽る。あるいは、緊急事態における勧告については、本当にご存知ないのかも知れませんね。」と3者揃って虚偽記載を批判した。
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