実験室での無菌操作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/15 04:44 UTC 版)
「無菌操作」は、微生物学者が実験を行う際に、検体に含まれる微生物が他の物質と入り混じらないように行う、特異な手技の総称である。検体が病原体であった場合、これが漏れ出せば実験者やその周囲の者に感染を引き起こす。また逆に、検体に外界の環境菌が混入した場合は、純粋培養の邪魔となる(単にコンタミと言う場合はこちらを指していることが多い)。継代等、培養物を新しい培地に移動するような作業で、無菌操作が行われる。 次のような火炎滅菌は、代表的な無菌操作の一つである。ここでは三角フラスコから試験管へ移植するという設定で説明する。 移動元となる三角フラスコ、移動先となる試験管、白金耳、ブンゼンバーナーを用意する。 バーナーに点火し、白金耳を炎に入れ、ゆっくりと前後に動かす。この時、ブンゼンバーナーの空気孔は青い炎になるように開け、白金耳は内炎の上端で焼く。この後、白金耳の中ほどより先端側は、作業終了まで検体以外に触れないようにする。 移動元と移動先の試験管やフラスコを両方、利き手でない方の手で持つ。次からの手順はコンタミを避けるために迅速に行う必要があるので、しっかり準備する。 利き手(の小指)で蓋をあけ、容器の口を焼いて邪魔な微生物を殺滅する。 白金耳を利き手に取り、三角フラスコに突っ込み、先端で検体を拾う。次いでそれを試験管に差し入れ、移植する。それがすむと、両容器の口を焼き、蓋を閉める。本ステップは速やかに終わらせること。 白金耳上の検体は曝露中、どんどん汚れていくことを留意して、1回1回上記のステップを正確に繰り返すこと。1回採った検体を複数の培地に一度に移植しないようにする。 なお、作業中は容器の口を中空に上向きにさらすのを徹底的に避ける。たとえばシャーレは必ずわずかにずらして蓋を引っかけ、フラスコは斜めに持つ。これらは落下する微生物を培地に到達させないためである。その他、細かい心配りがあり、ほとんど作法と言っていいレベルの工夫がなされる。微生物学専攻の学生は、実地の実験室で、経験で無菌操作の原理を教わる。コンタミを防ぐ手技を身に付ける王道は、練習を繰り返すことである。 作業台は、雑巾で清掃してアルコールで拭いた普通の作業台でも可能であるが、殺菌した空間を用意する方法もあり、その方が確実である。古くは無菌箱が使われたが、クリーンベンチを用いれば落下菌や浮遊菌のコンタミネーションを減らすことができるので格段に無菌操作はたやすくなった。さらに、検体がバイオハザードである可能性が高い場合は、必ず安全キャビネットを用いなければならない。
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