天体望遠鏡を用いた分光観測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/14 15:24 UTC 版)
「宇宙化学」の記事における「天体望遠鏡を用いた分光観測」の解説
光学望遠鏡、電波望遠鏡、宇宙望遠鏡等の天体望遠鏡を用いて、各周波数領域のスペクトルを観測することができる。この観測により、天体の化学的な組成や、温度や密度といった物理的な状態を知ることができる。これらの解析は実験室で行われる分光学的実験の結果に基づいて行われる。 電波望遠鏡を用いた分子の純回転遷移の観測は、遷移の周波数が分子固有の物であるので、原子数の少ない分子に対しては数本の遷移を観測することにより、精確に分子を同定することができる。また、特徴的な振動準位または電子状態を持つ分子は、光学望遠鏡を用いた 赤外または紫外・可視光線スペクトル観測により分子を同定することができる。これらの方法により、現在130種類以上(イオンを含む、同位体置換体を除く)の星間分子が、星間空間に存在することが知られている。 「星間分子の一覧」を参照 望遠鏡の性能の向上に伴って、この分野も発展をとげた。現在においては、観測された分子の中にはアルコールやアルデヒドのような様々な有機化合物が含まれる。望遠鏡のさらなる性能向上により、生命の起源に対する手がかりが期待されている。 また、観測された分子の中には、地球上では不安定で通常では観測されにくい分子が強い信号として観測されることがある(例えば、H3+などのイオンや、HCnNといったラジカル)。このような特別な分子の組成を説明するための化学反応(イオン-分子反応等)が研究されてきた。 星あるいは星間物質の組成を研究することは、関連する宇宙物理学に対して検証する手段を与える。すなわち、宇宙における水素とヘリウムの組成を決定することは、大統一場理論の予測と比べることで同理論を検証することにつながる。また、星に含まれる元素スペクトルあるいは星間物質の吸収スペクトルの研究は恒星の進化を検証し、ひいては銀河系の進化、宇宙の進化を明らかにすることにつながる。
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