基本的な原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/14 07:09 UTC 版)
D-グリセルアルデヒド IUPAC名 (R)-グリセルアルデヒド(許容慣用名)(R)-2,3-ジヒドロキシプロパナール(系統名) 分子式 C3H6O3 分子量 90.0779 CAS登録番号 453-17-8 形状 無色固体 密度と相 1.455 g/cm3, 固体 融点 145 °C(ラセミ体) 沸点 140–150 °C/0.8 mmHg(ラセミ体) SMILES OCC(O)C=O D/L表記法では、その分子をグリセルアルデヒドに対応させることで名づける。グリセルアルデヒドそのものがキラルであり、2つの光学異性体をD-とL-に呼び分けることができる。右図にD-体のグリセルアルデヒドを示す。L-体は-Hとヒドロキシ基(-OH)が、またはアルデヒド(-COH)とヒドロキシメチル基(-CH2OH)が入れ替わったものである。 この表記法によりどちらの光学異性体であるかを一義的に表記できる。ただ、グリセルアルデヒドと良く似た小さな生体由来化合物の場合、この表記が容易であるとは限らない。グリセルアルデヒドは、特定の化学反応を用いれば、その立体配座(コンフォメーション)を変えることなく、広く用いられるキラル分子を生成することができる。これが、D/L表記法という命名法が用いられる歴史的経緯となった。例えば、アミノ酸(アミノ酸と糖類はD/L表記法が良く用いられる生体分子の代表例である)のアラニンは2つの光学異性体を持っており、それらはそれぞれがどちらのグリセルアルデヒド異性体に由来するかによって表記される。なお、グリシンはグリセルアルデヒドから派生するアミノ酸であるが、キラルではない(アキラルである)ため光学異性体を持たない。対して、アラニンはキラルなのである。 D/L表記法は、旋光性を示す(+)/(−)表記とは関係が無い。つまり、どちらの鏡像異性体(エナンチオマー)が右旋性で、どちらが左旋性であるかは全く表現していない。むしろ、D/L表記法は、その化合物の立体構造が、グリセルアルデヒドのどちらのエナンチオマーの立体構造と関連しているか、を表記しているのである。タンパク質のなかによく見られる19種あるL-アミノ酸のうち、9つは右旋性であるし(波長589nmにおいて)、D-フルクトースは“levulose”(果糖)の名のとおり、“levorotatory”(左旋性)である。 実は、グリセルアルデヒドの右旋性異性体は D-体である。これは幸運なことであった。というのも、このD/L表記法が確立された時代には、どちらの立体配置が右旋性かを知る方法が無かったからである。もし、この予想が間違っていたとしたら、今日のD/L表記は更に混乱を招くものとなっていたであろう。
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