坪内 稔典とは? わかりやすく解説

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坪内稔典

坪内稔典の俳句

おとといのああしたことも鶴渡る
か、仮に 女盛りの昼へ行く
がんばるわなんて言うなよ草の花
せりなずなごぎょうはこべら母縮む
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
びわは水人間も水びわ食べる
みんなして春の河馬まで行きましょう
ゆびきりの指が落ちてる春の空
ストレスのたまる松の木秋うらら
バッタとぶアジアの空のうすみどり
三月の甘納豆のうふふふふ
三月や人のきれいな膝小僧
会うたびに無口になる父鯖を裂く
列島をかじる鮫たち桜咲く
君はいま大粒の雹、君を抱く
坪内氏、おだまき咲いて主婦を抱く
塩鯖がかつと目をあけ雑木山
帰るのはそこ晩秋の大きな木
日本の春はあけぼの犬の糞
春の風ルンルンけんけんあんぽんたん
春風の大阪湾に足垂らす
晩夏晩年角川文庫蠅叩き
柿若葉カミさんと地図買いに出て
桜散るあなたも河馬になりなさい
水中の河馬が燃えます牡丹雪
浮雲は中也の帽子春の丘
秋風にちりめんじゃこが泳ぎ着く
飯噴いてあなたこなたで倒れる犀
鬼百合がしんしんとゆく朝の空
魚くさい路地の日だまり母縮む
 

坪内稔典

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/08 04:53 UTC 版)

坪内 稔典(つぼうち としのり、俳号ではねんてん、1944年4月22日 - )は、日本俳人国文学者京都教育大学名誉教授。「船団の会」元代表。研究者としての専門は日本近代文学で、特に正岡子規に関する著作・論考が多い。

俳句の口誦性を重んじ、遊び心と軽妙なリズム感豊かな句を詠む。句集に『落花落日』(1984年)、『猫の木』(1987年)、『ヤツとオレ』(2015年)、評論に『俳句のユーモア』(1994年)など多数。

経歴

愛媛県西宇和郡町見村九町(現在の伊方町)に生まれる。愛媛県立川之石高等学校立命館大学文学部日本文学科卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。園田学園女子大学助教授、京都教育大学教授、京都教育大学教育学部附属桃山中学校校長、佛教大学教授などを歴任[1]

高校時代から句作を始め、担任教師の勧めで「青玄」に投句、伊丹三樹彦に師事。詩集『石斧の音』刊行[2]。大学では日本近代文学、特に詩歌を専攻。在学中、山下勝也、澤好摩らと学生俳句連盟を組織し、その中心人物となる。学生俳句会の仲間であった摂津幸彦らともに同人誌「日時計」「黄金海岸」を創刊。

1976年、若い俳人の拠点として「現代俳句」を創刊、1985年まで20集を刊行した。同年、会員制の俳誌「船団」を創刊、第5号から第122号(2019年)の解散まで「船団の会」代表を務める。同誌参加者にはあざ蓉子池田澄子鳥居真里子、火箱ひろ、ふけとしこなど。また短歌結社心の花」会員でもある。

大学時代はパチンコに勤しみ、その間に正岡子規などを読むような生活を送っていたが、学生結婚を機に本格的に子規研究を始めた。子規研究のほか、子規の友人で俳人でもあった夏目漱石に関する研究でも知られる。

1986年尼崎市市民芸術賞奨励賞受賞。2000年、京都府文化賞功労賞受賞。2001年、第9句集『月光の音』で第7回中新田俳句大賞スウェーデン賞受賞。2004年、京都市文化功労者。2006年、ナメコロジー大賞受賞。2010年、『モーロク俳句ますます盛ん 俳句百年の遊び』で第13回桑原武夫学芸賞受賞。2020年兵庫県文化賞受賞。

柿衛文庫・也雲軒俳句塾塾頭、愛媛県文化振興財団芝不器男俳句新人賞選考委員、俳句インターハイ講評・審査員、日本文学にみる河川委員などを務める。

「819」が「俳句」と読めることから、8月19日を「俳句の日」と命名したことでも知られる。

俳句

一見ナンセンスな、軽快で憶えやすいリズムを持つ句が多く、コマーシャル俳句などと呼ばれていたこともある[3]。坪内自身は俳句の本質を「口誦(こうしょう)性」と「片言(かたこと)性」にあると捉え、俳論などでしばしば論じている。「口誦性」とは「簡単におぼえてどこででも口にできる」ことであり、「片言性」とは、ことわざなどと同じように短く、言い尽くせないということで、そのことによって却って読み手から多様な解釈を誘い出し、言葉の多義性を豊かに発揮できるのだとする(「俳句の楽しさ」『口承と片言』収録)。

掲句のほかにも「桜散るあなたも河馬になりなさい」など、愛好する動物である河馬の句を多く作っている。

著書

句集

  • 『春の家』沖積舎 1976年
  • 『わが町』沖積舎 1980年
  • 『落花落日』海風社 1984年
  • 『坪内稔典句集』ふらんす堂(現代俳句文庫)1992年
  • 『百年の家』沖積舎 1993年
  • 『人麻呂の手紙』ふらんす堂 1994年
  • 『ぽぽのあたり』沖積舎 1998年
  • 『月光の音』毎日新聞社 2001年
  • 『坪内稔典句集』芸林書房(芸林21世紀文庫)2003年
  • 『坪内稔典句集』沖積舎 2003年
  • 『坪内稔典句集2』ふらんす堂(現代俳句文庫)2007年
  • 『水のかたまり 坪内稔典句集』ふらんす堂 2009年
  • 『ヤツとオレ』KADOKAWA 2015年
  • 『リスボンの窓』ふらんす堂 2024年

評論、随筆、研究書ほか

  • 正岡子規 俳句の出立』俳句研究社 1976年
  • 『過渡の詩』牧神社 1978年
  • 『土曜の夜の短かい文学 関西の現代俳句と俳人たち』関西市民書房 1981年
  • 『俳句の根拠』静地社 1982年
  • 『世紀末の地球儀 評論集』海風社 1984年
  • 『おまけの名作 カバヤ文庫物語』いんてる社 1984年
  • 『弾む言葉・俳句からの発想』くもん出版 1987年
  • 『子規山脈』日本放送出版協会 NHK市民大学 1987
  • 『俳句 口誦と片言』五柳書院 1990年
  • 『正岡子規 創造の共同性』リブロポートシリーズ民間日本学者 1991年
  • 『現代俳句入門』沖積舎 1991年
  • 『俳句のユーモア』講談社選書メチエ 1994年岩波現代文庫 2010年
  • 『風呂で読む俳句入門』世界思想社 1995年
  • 『新芭蕉伝-百代の過客』本阿弥書店 1995年
  • 『子規山脈』日本放送出版協会(NHKライブラリー) 1997年
  • 『子規のココア・漱石のカステラ』日本放送出版協会 1998年/NHKライブラリー 2006年
  • 『京の季語』(冬・夏・春・秋 新年)光村推古書院 1998-99年
  • 『坪内稔典の俳句の授業』黎明書房 1999年
  • 『豆ごはんまで 歌集』ながらみ書房 2000年
  • 『俳句的人間短歌的人間』岩波書店 2000年
  • 上島鬼貫』神戸新聞総合出版センター 2001年
  • 俳人漱石』岩波新書 2003年
  • 『俳句発見』富士見書房 2003年
  • 『大事に小事』創風社出版 2005年
  • 『言葉の力』思文閣出版 佛教大学鷹陵文化叢書 2005年
  • 『柿喰ふ子規の俳句作法』岩波書店 2005年
  • 『俳句で歩く京都』淡交社(新撰京の魅力) 2006
  • 『季語集』岩波新書 2006年
  • 『カバに会う 日本全国河馬めぐり』岩波書店 2008年
  • 『正岡子規の<楽しむ力>』日本放送出版協会(生活人新書) 2009年
  • 『モーロク俳句ますます盛ん 俳句百年の遊び』岩波書店 2009年
  • 『高三郎と出会った日』沖積舎 俳句と俳文 2009
  • 『正岡子規・言葉と生きる』岩波新書 2010年
  • 『坪内稔典コレクション』沖積舎
第1巻 カバヤ文庫の時代 2011
第2巻 子規とその時代 2010
第3巻 芭蕉とその時代 2013
  • 『俳句の向こうに昭和が見える』教育評論社 2012
  • 『柿日和 喰う、詠む、登る』岩波書店 2012

共編著

  • 『漱石俳句集』 岩波文庫 1990年
  • 『女うた男うた』全2巻、道浦母都子共著 リブロポート 1991-93年 のち平凡社ライブラリー
  • 『一億人のための辞世の句』vol.1-3 蝸牛社 1997-1998年
  • 『京の季語』—春/夏/秋/冬/新年 橋本健次共著 光村推古書院 1998-99年
  • 『短歌の私、日本の私』 岩波書店(短歌と日本人)1999
  • 『日本の四季旬の一句』仁平勝細谷亮太 講談社 2002年
  • 『子規百句』小西昭夫共編 創風社出版 2004年
  • 『俳句で歩く京都』三村博史共著 淡交社 2006年
  • 『漱石・熊本百句』あざ蓉子共編 創風社出版 2006年
  • 不器男百句』谷さやん共編 創風社出版 2006年
  • 『漱石・松山百句』中居由美共編 創風社出版 2007年
  • 山頭火百句』東英幸共編 創風社出版 2008年
  • 『言葉のゆくえ 俳句短歌の招待席』永田和宏共著 京都新聞出版センター 2009年
  • 『新版 古寺巡礼京都〈38〉寂光院』瀧澤智明共著 淡交社 2009年
  • 『季語のキブン』杭迫柏樹共著 二玄社 2009年
  • 『現代俳句入門』編 沖積舎 2009
  • 『鬼貫百句』鬼貫を読む会著(編)創風社出版 2010
  • 『ねんてん先生の俳句の学校』全3巻 監修 教育画劇 2011
  • 赤黄男百句』松本秀一共編 創風社出版 2012
  • 『書き込み式俳句入門ドリル』監修 主婦と生活社 2012
  • 『絵といっしょに読む国語の絵本 漢詩のえほん』監修 くもん出版 2013
  • 『絵といっしょに読む国語の絵本 詩のえほん』監修 くもん出版 2013
  • 『漱石・東京百句』三宅やよい共編 創風社出版 2013
  • 『絵といっしょに読む国語の絵本 短歌のえほん』監修 くもん出版 2013
  • 『絵といっしょに読む国語の絵本 俳句のえほん』監修 くもん出版 2013
  • 池田澄子百句』中之島5共編 創風社出版 2014
  • 『絵といっしょに読む国語の絵本 古典のえほん』監修 くもん出版 2014
  • 『絵といっしょに読む国語の絵本 論語のえほん』監修 くもん出版 2014

脚注

  1. ^ 『坪内稔典句集〈全〉』沖積舎、2003年、著者等紹介頁。 
  2. ^ 『坪内稔典コレクション』第1巻
  3. ^ 坪内稔典 「月々の名言 ―4月―」『佛大通信』Vol.523(平成21年4月号)https://web.archive.org/web/20150923195200/http://www.bunet.jp/world/html/meigen/523_meigen/

参考文献

  • 金子兜太編 『現代の俳人101』 新書館 2004年
  • 坪内稔典 『俳句 口誦と片言』 五柳書院 1990年
  • 坪内稔典 『坪内稔典句集 現代俳句文庫1』 ふらんす堂 1992年

関連項目

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