摂津幸彦とは? わかりやすく解説

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攝津幸彦

攝津幸彦の俳句

さやうなら笑窪荻窪とろろそば
それとなく御飯出てくる秋彼岸
なんとなく生きてゐたいの更衣
ぶらぶらを春の河まで棄てにゆく
ヒト科ヒトふと鶏頭の脇に立つ
丈夫やマニラに遠き波枕
今の間のおういぬふぐり聖人去り
南国に死して御恩のみなみかぜ
南浦和のダリアを仮のあはれとす
国家よりワタクシ大事さくらんぼ
土砂降りの映画にあまた岐阜提灯
大辞典亡父は桜さくらかな
幾千代も散るは美し明日は三越
弥栄の国の木高しすもももも
愛しきを抱けば鏡裏に蛍かな
愛人の麦のひがしを刈りのこす
或る雨の猿の腰掛早乙女に
新聞紙揉めば鳩出る天王寺
春巻きを揚げぬ暗黒冬を越え
校門の陰に春暮の卵佇つ
殺めては拭きとる京の秋の暮
水枕干されて海の駅にあり
江戸の空東京の空秋刀魚買ふ
波羅蜜多体育館にしやぼん玉
滅び初む桃より見えし歩兵かな
父にしてむかし不良の木霊かな
物干しに美しき知事垂れてをり
皇国花火の夜も英霊前を向き
皇国且つ柱時計に真昼来ぬ
皇軍や砕けし玉をねぶる馬
美しき学校あらば草朧
美しき腰遅れつつ輪廻せり
花守の花に生まれて匂ひけり
虹の根にあらむ亡父のはんだごて
が<隠れて生きよ>と人妻
蟬しぐれもはや戦前かもしれぬ
軍艦が常の笑ひのあひるかな
送る万歳死ぬる万歳夜も円舞曲
野菊あり静かにからだ入れかへる
鍵かけてしばし狂ひぬ春の山
階段を濡らして昼が来てゐたり
雨の日は傘の内なり愛国者
雲呑は桜の空から来るのであらう
露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな
馬上より淋しく一人静かな
鬼あざみ鬼のみ風に吹かれをり
鶏追ふやととととととと昔の日
黄金の蓮へ帰る野球かな
黒船の黒の淋しさ靴にあり
 

攝津幸彦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/11 05:45 UTC 版)

攝津 幸彦(せっつ ゆきひこ、1947年1月28日 - 1996年10月13日)は、日本の俳人

経歴

兵庫県養父郡八鹿町に生まれる。母良子(摂津よしこ)は桂信子主宰の「草苑」の幹部同人で、1980年の角川俳句賞受賞者。

高槻中学校・高等学校を経て、関西学院大学卒業。高校時代より叔父の影響でジャズを聞くようになり頻繁にジャズ喫茶に通った。大学では在学中は映画研究会に所属。また伊丹啓子(「青玄」主幹伊丹三樹彦の娘)を知り「関学俳句会」創立、機関誌「あばんせ」を創刊。また学生俳句会のつながりで、他大学の坪内稔典澤好摩らと交流、大学を超えた同人誌「日時計」創刊に参加する。

1970年、広告会社の東京旭通信社(現・ADKホールディングス)に入社し上京。1972年田中資子と結婚。1974年、大本善幸、坪内稔典らと「黄金海岸」創刊。1974年、「鳥子幻影」で俳句研究「第二回五十句競作」にて佳作第一席となり、編集長高柳重信に見出され一躍注目される。1980年、俳誌「」創刊に仁平勝らとともに参加。同誌は遅刊で知られたものの、前衛俳句の一大拠点となった。1992年より肝炎で入退院を繰り返し、1996年順天堂病院にて死去。享年49。

作品

よく知られている句に、

  • 南浦和のダリヤを仮のあはれとす(『烏子』)
  • 幾千代も散るは美し明日は三越(同)
  • 南国に死して御恩のみなみかぜ(同)
  • 階段を濡らして昼が来てゐたり(『烏屋』)
  • 露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな(『陸々集』)

などがある。俳句を意味の中だけで完結させることを嫌い、自立した言葉同士が邂逅することによって生まれる新しい叙情性を追及した[1]。また明治・大正から戦前・昭和戦後の日本の原風景を素材としたものが多く[2]、特に「幾千代も」「南国に」の句が含まれる「皇国前衛歌」と呼ばれる一連の作品群は、言葉から出発して俳句におけるフィクション表現を完成したものとして評価されている[3]

句集

  • 『姉にアネモネ』1973年
  • 『鳥子』1976年 ぬ書房
  • 『與野情話』1977年 沖積舎
  • 『鳥屋』1986年 冨岡書房
  • 『鸚母集』1986年 書肆麒麟
  • 『陸々集』1992年 弘栄堂書店
  • 『鹿々集』1995年 ふらんす堂
  • 『攝津幸彦集』1994年 ふらんす堂
  • 『攝津幸彦全句集』 1997年(2006年改版) 沖積舎
  • 『攝津幸彦選集』2006年 邑書林

出典

  1. ^ 筑紫磐井 「語録・文章・俳句から」 『攝津幸彦選集』 150-151頁
  2. ^ 筑紫磐井 「摂津幸彦」 『現代俳句ハンドブック』 51頁
  3. ^ 仁平勝 「攝津幸彦論」 『12の現代俳人論 下』 230-232頁

参考文献

  • 攝津幸彦 『攝津幸彦選集』 邑書林、2006年
  • 正木ゆう子、片山由美子、仙田洋子、大屋達治、筑紫磐井、仁平勝 『12の現代俳人論 下』 角川選書、2005年
  • 齋藤慎爾、坪内稔典、夏石番矢、榎本一郎編 『現代俳句ハンドブック』 雄山閣、1995年

関連文献

  • 仁平勝 『路地裏の散歩者』 邑書林、2014年

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