がんばるわなんて言うなよ草の花
| 作 者 | |
| 季 語 | |
| 季 節 | 秋  | 
| 出 典 | 猫の木  | 
| 前 書 | |
| 評 言 |  坪内稔典氏と言えば「三月の甘納豆のうふふふふ」や「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」など、最近では多くの国語教科書に取り上げられている。虚子と並んで教科書に載っているのを見るとそれだけでクスッとしてしまう。掲句は、かの開成中学の入試問題にも出題されているそうだ。 「草の花」という季語と「がんばるわって言うなよ」という口語の取り合わせが絶妙な一句であるが、さて「がんばるわ」って誰が言っているのだろう。「草の花」だという解釈が一般的であるようだが、私は実在する任意の誰かと読みたい。「がんばる」ってことばが、その聞いている相手に痛く突き刺さることがある。十分にがんばっているのに結果が出ずそれでも「がんばる」って言葉を口にしなければならない状態にある人が発する場合だ。「がんばっていることはもう十分わかっているから『がんばるわ』なんて口にしなくてもいいよ。野に咲く名もない草花のひとつひとつを見てご覧よ。みんなキレイにがんばって咲いているだろう。僕も君のがんばりにちゃんと気づいているから」と青春ドラマのような台詞を想起させる。教員をしていると生徒の負担になっていることに気づかず「がんばれ」とすぐに声を掛けてしまう。そんな自分に気づかせてくれた一句である。 俳句によって気づき、俳句によって諫められる。時には俳句によって元気づけられ、俳句があったからこそ生きてこられたという人もいる。坪内稔典氏は、俳句の可能性の広がりを常に模索し、そのこと自体を楽しんでいる。そこが氏の最大の魅力ではなかろうか。 撮影:~イトナンリルゥ~層雲峡山便り・ぴ~ | 
| 評 者 | |
| 備 考 | 
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