噴出の原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 02:56 UTC 版)
「シドアルジョの泥火山」の記事における「噴出の原因」の解説
地下に過度の圧力がたまり何らかの振動がきっかけとなり噴出が始まったとされているが、きっかけとなった振動については科学者の中でも意見が分かれており、泥火山噴出の2日前に約260キロメートル離れたジョグジャカルタで発生したマグニチュード6.3の地震が原因だとする説、噴出口から150メートルの位置にあるバンジャル・パンジ (Banjar Panji) 天然ガス田が原因だとする説の2つがある。 2008年にケープタウンで米国石油地質家協会(英語版)の会議が開催され、双方の仮説の支持者がディベートを行った。ダラム大学のリチャード・デイヴィスは新たに公開された試掘井のデータからは噴出の原因となった圧力の上昇が読み取れると主張したが、ラピンド・ブランタス社の掘削アドバイザーであるロッキー・サウォロ (Rocky Sawolo) はそのデータの圧力は許容範囲内に収まっていると反論した。彼の同僚でオスロ大学のアドリアーノ・マッツィーニ (Adriano Mazzini) は地震が原因だと主張したが、カーティン大学のマーク・ティンゲイ (Mark Tingay) は地震のマグニチュードは6.3と小さすぎると反論した。投票の結果、議論を聞いた地質学者ら74人の内42人が掘削が原因だとする説を支持し、13人が地震と掘削の両方が原因だとし、16人は証拠不十分と判断、地震のみが原因だとしたのは3人だけだった。この投票結果に対し、議長を務めたエジンバラ大学のジョン・アンダーヒル (John Underhill) は「圧倒的大差」で掘削が最有力の原因として支持されたと述べた。 2007年の『GSAトゥデイ(英語版)』では、ガスの試削井が地下2800キロメートルの高圧の岩石を刺激したのが原因だという説が掲載された。2008年の『ナショナルジオグラフィック』の特集記事では、同じく掘削が原因だとするダラム大学のリチャード・デイヴィスの見解が報じられたが、彼は地震はあまり大規模ではなく震源も遠いと指摘し、自身の調査で掘削が原因だという有力な調査が得られたと述べた。2013年に『ネイチャー ジオサイエンス』に掲載された論文では、ボン大学のスティーブン・ミラー (Stephen Miller) らのコンピュータモデルを使用した研究によりジャワ島中部の地震が原因だと主張している。だが、リチャード・デイヴィスはこの論文に懐疑的であり、井戸の圧力は地震以前から高かったと指摘、圧力が高い状態で適切な措置をとらずに採掘用のドリルを引き抜いたことが原因だと主張した。また、2015年に『ネイチャー ジオサイエンス』に掲載された論文もミラーらの論文に異論を唱えており、掘削作業中に測定されていた天然ガスの濃度と組成を分析して、原因は地震ではなく天然ガスの掘削調査だと主張している。この論文の共同執筆者であるアデレード大学のマーク・ティンゲイによると、地震により地下深部の粘土が液状化して噴出した泥土の発生源となったのであれば大規模な天然ガスの噴出により泥流が上昇し地上に噴出するはずだが、分析結果はそのような天然ガスの噴出が発生していないと示していたという。2017年夏に『マリン・アンド・ペトロリアム・ジオロジー(英語版)』に掲載された論文では、ジョグジャカルタの地震が原因だと提唱している。
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