商品の移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 02:32 UTC 版)
欧州連合の機能に関する条約第3部第2編において、商品の移動に関する条項が規定されている。2つの世界大戦間の時期、また世界恐慌にかけて、世界各国の政府は保護貿易政策を推し進めていた。輸入品、時には輸出品にかけられる関税の急激な上昇により、各地で貿易高や経済成長が失速した。アダム・スミスやデイヴィッド・リカード以降の経済学者は、長期の低迷と国際貿易に関する障壁や費用を排除することによって諸国民の富は強化される、と唱えてきた。このような障壁をすべて取り除くということがローマ条約の条文につながっている。同条約第28条には次のように規定されている。 (日本語仮訳)輸入に関する量的規制及び同等の効果を有するすべての方策は、加盟国間において禁止する。 欧州連合の機能に関する条約第35条には輸出に関して同様の規定がされている。注目するべきは規制の禁止は加盟国間のみを対象にしていることである。機関の主要な業務のひとつに、アメリカや中国と言った第3国との貿易政策の管理がある。例えば、議論はあるが共通農業政策では欧州連合の機能に関する条約第40条第1項の定めに基づいて、欧州の共通機関に「国内市場機関の強制的協調」の権限が与えられている。 次に欧州連合の機能に関する条約第36条に着目すると、商品の自由な移動に禁止に関する例外規定がなされている。 (日本語仮訳)第34条、第35条の規定は、良俗、公の秩序または公衆の安全;人、動物または植物の健康および生命の保護;芸術的、歴史的及び考古学的価値を有する国民財産の保護;もしくは興行場及び商業上の財産の保護に基づく正当事由による輸出入または商品の移動に関する禁止または制限を妨げない。ただし、禁止または規制措置は恣意的な差別のための手段であったり、加盟国間の貿易に関する偽装的な制限であってはならない。 このため加盟国政府は良俗や公の秩序、公衆の安全、健康、文化、あるいは工業及び商業の財産が、障壁を完全に排除した場合に脅威にさらされるのであれば、一定程度の障壁を残すことを正当化することができる。近年の例ではイギリスでの狂牛病発生のさいに、フランスがイギリス産牛肉の輸入停止を実施したものがある。
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