品第法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/13 07:25 UTC 版)
品第法(品等法とも)とは、書人の優劣上下をランク付けする方法である。東晋以来、書を論ずるのに人物を比較して優劣上下を定める方法が多い。このような品第法の見られるのは南朝宋の虞龢の『論書表』が初めであり、上中下の品第が行われている。その方法が斉梁のころになると九品法という古来から行われている品等の立て方を用いるようになり、『書品』にそれが見られる。また、その『書品』には「天然と工夫」という言葉で言い表す品評の方法があり、これが『書品』の要旨となっている。その他に、「天性と習学」、「心と手」、「意と筆」、「神彩と形質」などの表現を使って品評している書論もある。 李嗣真の『書後品』は、『書品』の9品の最上(上上品)の上に逸品を設け10品とし、秦から唐にいたる82人をランク付けしている。逸品には李斯と四賢の5人をあげてさらに絶対的な存在とした。 書体別・書人ランク一覧(『書断』)書体神品妙品(人数)能品(人数)古文 該当なし 4 4 大篆 史籀 4 5 籀文 史籀 0 0 小篆 李斯 5 12 八分 蔡邕 9 3 楷書 鍾繇、王羲之、王献之 25 23 行書 張芝、鍾繇、王羲之、王献之 16 18 章草 杜度、崔瑗、張芝、皇象衛瓘、索靖、王羲之、王献之 8 15 飛白 蔡邕、王羲之、王献之 5 1 草書 張芝、王羲之、王献之 22 25 計 25人(実数12人) 98 106 総計 229人(実数120人程度) 張懐瓘の『書断』中巻では、神・妙・能の3品にランク付けし、書体別に書人のランクを一覧にしている。その書人ランク一覧では延べ229人の書人(実数は120人程度)が列挙されており、最上の神品には25人(実数12人)が入り、二王だけが5書体(楷書・行書・章草・飛白・草書)でランクされている。書の品第には各体を能くして変幻自在であるという条件があり、二王が尊ばれる要因がここにある。 楷書の品第 楷書は後漢末に隷書より発生、魏晋で発達、六朝で盛行し、初唐の三大家によって大成された。その唐人の楷書は洗練された結構と明瞭な法則性によって楷書の典型を確立している。しかし、『書後品』の逸品に楷書としてランクしているのは鍾繇と王羲之で、初唐の三大家は上下品の最後にランクされている。また、『書断』の神品には鍾繇・王羲之・王献之が載り、初唐の三大家は妙品25人の最後の方である。これについて姜夔は『続書譜』で、「楷書は鍾繇を第一とし、王羲之がこれに次ぐ。二家の書はいずれも瀟洒縦横であり、すこしも平正にこだわっていない。唐人の運筆は型にはまっていて科挙の習気を帯び、もはや魏晋の飄逸の気が失われている。(趣意)」と述べている。
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