合体の系統樹
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 01:07 UTC 版)
20世紀の標準の宇宙論では、1つの銀河は何回かのダークマターハロー(英語版)同士の合体によって、ハローのガスが冷却されハローの中心で星形成が起こることで光学的に観測可能な銀河という天体へとなることで形成されると考えられていた。数学的グラフによるダークマターハローの合体やその次に起こる星形成のモデリングは、純粋なN体シミュレーションや統計的手法による準解析的な計算によって行われてきた。 1992年にミラノで開催された観測的宇宙論会議で、Roukema、Quinn(英語版)、Peterson(英語版)は宇宙論的N体シミュレーションによって抽出されたダークマターハローの最初の合体の系統樹を示した。この系統樹は星形成率と銀河進化の仮説を組み合わせ、異なる宇宙の時代の銀河の光度関数(どのくらいの明るさの銀河がどれほどの数存在するかを示す関数)を示している。ダークマターハローの複雑な力学を考慮すると、合体系統樹をモデリングするうえで重要な問題となるのは、ある時点でのハローがその1つ前の時点でのハローの子孫であることをどう定義するか、である。Roukemaのグループは、この定義を、ある時点でのハローがその前の時点でのハローに含まれる粒子の50%以上を含んでるかどうか、という関係性を利用して決定するという手法を用いた。これにより、どのハローでも時間のステップを1つ進める間に、2つ以上の子孫を持たないということが保証された。この銀河形成モデリングの手法は、合成スペクトルから求まる銀河の数的な特徴や、観測に一致する銀河の統計的な特性を高速に計算できるとして受け入れられた。 同じ1992年の会議において、これとは独立してLaceyとCole(英語版)はPress–Schechter理論(英語版)と力学的摩擦(英語版)の理論を組み合わせて、ダークマターハローの合体系統樹とそれに対応するハローの核での銀河の誕生をモンテカルロ法で統計的に計算する方法を示した。Kauffmann(英語版)、 サイモン・ホワイト、Guiderdoniは翌1993年にこの手法をガスの冷却や星形成、超新星からのガスの再加熱、および渦巻銀河から楕円銀河への転換などを含め拡張し、準解析的に定式化した。Kauffmannのグループと、岡本崇・長島雅裕はのちに、合体系統樹のアプローチを派生させたシミュレーション法を発表している。
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