各国の災害法制と役割分担
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主要国の災害法制と主要機関の分担は、2012年の時点で以下のようになっている。 ドイツ - 「民間人保護及び連邦の防災支援に関する法律」が基本法。もとは戦時の非常事態対処のためのもの(有事法制)で、これを自然災害にも応用する制度。災害対応は軍が中心。 フランス - 「民間安全保障の刷新に関する2004年8月13日の法律」が基本法。災害対応は5段階に分けられており、各段階ごとに市町村長、県知事、管区知事、国務大臣など権限主体が異なる。 イギリス - 「2004年市民緊急事態法」が基本法。女王または行政府が緊急事態規則の制定権を有する。 ロシア - もとは有事法制に基づいていたが、「自然災害非常事態法」と「非常事態宣言法」という基本法がある。宣言を適用した地域では連邦制が停止されて政府の統制下に入り、経済活動の制限も行われる。 アメリカ - 「ロバート・T・スタフォード法」が基本法。災害対応を目的とする。災害対応専門常設機関の緊急事態管理庁 (FEMA) があり、軍とは別に活動する。災害対応は原則として各州が行うが、大統領が緊急事態宣言を発令するとFEMAを通じて各機関の役割分担を調整し援助する仕組み。2005年ハリケーン・カトリーナの対応ではFEMAの課題も指摘された。 ニュージーランド - 「2002年民間防衛緊急事態管理法」が基本法。緊急事態の宣言により、行政府の権限が強化される。 韓国 - 「災難および安全管理基本法」「自然災害対策法」「民間防衛基本法」など多くの法律がある。役割分担が不明確な点もある。 ヨーロッパ諸国の災害法制は有事法制を基に拡大したものであるが、有事法制と災害法制は明確に区別した方が良いという考え方が存在する。日本の災害法制は、有事法制と明確に区別されている点、応急策や復旧復興よりも災害抑止・軽減に重点を置く防災中心主義である点、緊急事態法制がない点などを特徴とする。防災計画を念入りに練って段階的に対応する点でフランスに類似する。ただ、災害対策基本法では責任が市町村に課せられる一方、災害救助法では都道府県に権限が与えられるなど、法律によってねじれが生じている部分があり、権限がフランスのように整理されていない。また、平時同様の省庁割りを基本として政府が対策本部を設置するという方法はアメリカに類似するが、常設機関が無い点は異なる。
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