古典イスラーム法上の結婚最低年齢に関する議論
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「イスラームと児童性愛」の記事における「古典イスラーム法上の結婚最低年齢に関する議論」の解説
古典イスラーム法上の結婚最低年齢にはいくつかの説がある。 通常の解釈に従えば、ブハーリーのハディースによるところの、預言者ムハンマドと結婚し、初性交を行ったときのアーイシャの年齢に基づき、少なくとも結婚に関しては9歳である。そのため現代の観点では女児に対する性的虐待であるとみなされる性行為も、結婚の上なら合法とされ、問題視されなかった。現代でもイランやサウジアラビアなどイスラーム世界のごく一部の国では、イスラーム法上の結婚最低年齢をそのまま施行しており、国際的な批判を浴びている。サウジでは親の借金のかたとして8歳の少女が結婚させられた事例がある。ただし、この場合裁判官は上記のイスラーム法で定められた年齢まではセックスを行わないよう夫に求めている。 サウジアラビアのシャリーアが9歳の少女との結婚・セックスを肯定することに関しては、人権上の観点から批判するものも多い。しかしこれらの批判に対して、サウジのウラマー(イスラーム法学者、実質的なイスラームの聖職者)達で構成される、高位聖職者評議会の議長アブドゥル・アズィーズ・アル・シェイフ(古典アラビア語転写:abdu al-azizi al-shaykhu、古典アラビア語口語読み:abdulaziz alsheykh)は、シャリーアでは10歳の少女でも結婚・セックスの対象とすることができ、むしろシャリーアに対する批判を行う側こそ少女達への不正義を行っていると述べた。 更に上に挙げたイエメンのように、結婚最低年齢を定めない国もある。また初潮がきた場合即結婚・セックスの対象として許されるという解釈も存在している。反イスラーム主義者の中には、このことを取り上げてイスラームは児童性愛・児童性的虐待を認める宗教と攻撃する人間も存在している。 しかし少女愛運動の信奉者など、児童性愛の遂行を児童性的虐待と切り離す人々の中には、このような法規定は児童性愛者の存在を認めうるものであり、むしろ現代の世界においても有用な法であるとする意見も存在している。 また、そもそも現代のイスラーム教国のほとんどの法律では女性の結婚最低年齢や法的同意年齢は医学的な性的成熟を踏まえたものであり、15歳から18歳程度であって非イスラーム諸国とも変わらない。また当該国のイスラーム法学者の多数派の解釈も、このような法律を支持しており、古典イスラーム法に基づく9歳からの結婚・性行為の合法化を求めている人間は、きわめて少数派である。イランやサウジアラビアのような古典イスラーム法による結婚最低年齢を施行する国でも、実際はほとんどの人間は二十歳を過ぎて男女とも結婚している。このような大事実を無視して、例の少ない事例を見つけ出してイスラーム全体とみなすのは不適切であるという意見もある。
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