原子論的シミュレーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/06 09:07 UTC 版)
「ナノトライボロジー」の記事における「原子論的シミュレーション」の解説
詳細は「分子シミュレーション」を参照 ナノトライボロジーにおいて、数値計算はナノインデンテーションや摩擦、摩耗、潤滑のような多様な現象の研究に有用である。原子論的シミュレーションではひとつひとつの原子の運動やその軌跡を高い精度で求めることも可能であり、その情報は実験結果の解釈や、理論の検証や、実験的には実現困難な現象の研究に用いられる。さらに、試料調製、機器校正のような実験上の困難の多くは原子論的シミュレーションには存在しない。また、傷一つない清浄表面から極度に乱れたものまで、理論的にはいかなる表面も扱うことができる。ナノトライボロジーの分野に限ったことではないが、原子論的シミュレーションは原子間ポテンシャルが近似的にしか得られていないことや計算機能力の限界によって制約を受ける。このため、シミュレーション時間は多くの場合小さく(フェムト秒)、時間ステップは第一原理シミュレーションで1 fs、粗視化モデルで5 fsに限定される。 原子論的シミュレーションによって、SPM測定中に探針と試料表面の間の引力によって急激な接触が起きることが示されている。この現象は、荷重制御AFMにおいてカンチレバーが柔軟であるために起きるスナップインとは全く異なる起源を持つ。また、AFMの原子分解能の起源もシミュレーションによって発見された。探針と試料の原子の間に共有結合が形成され、それがvan der Waals相互作用より支配的にはたらくために高い解像度が生まれるという。しかし、コンタクトモードAFMのスキャン中に原子空孔やアドアトムを検出するには原子レベルで鋭い先端が必要であることもシミュレーションで明らかになった。その一方、タッピングモードでは、先端が原子レベルで鋭くなくとも、いわゆる周波数変調法によって原子空孔やアドアトムを識別することができる。結論として、現実のAFMで原子分解能を達成できるのはノンコンタクトモードのみである。
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