医学への直接的貢献
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 06:19 UTC 版)
ヒポクラテスとヒポクラテス派の医師たちは、多くの病気とその症状について医学史初となる記述を残した。中でも慢性化膿性肺疾患、肺がんやチアノーゼ性心疾患(先天性心疾患のうちチアノーゼ性のもの)を診断するうえで重要な兆候となる、指がばち状となる症状を最初に記述したとされ、このことから、ばち指のことを「ヒポクラテス指(またはヒポクラテス爪)」ともいう。また『予後論』において、初めてヒポクラテス顔貌(死相のこと)について記述したことも知られているが、この表現は、シェイクスピアの史劇『ヘンリー五世』第2幕第3場のフォルスタッフの死の場面で使われたことでも有名である。 ヒポクラテスは病気を急性・慢性・風土病・伝染病の四つに分類し、「悪化・再発・消散・分利・発作・峠・回復」といった用語を用いた。その他の主な業績としては、胸腔内に膿がたまった状態である膿胸の症状の例や、身体所見、外科治療法と予後についての記述があげられ、ヒポクラテスの教えは現代呼吸器学や外科を学ぶ者にとっても今日的な意味を持っている。ヒポクラテスは文書に記録の残るなかでは最初の胸部外科医であり、ヒポクラテスによる発見の数々は現在でも有効である。 ヒポクラテス学派は、(その理論の質は高くないものの)直腸の疾患と治療法についても詳しい記述を残している。例えば、痔は胆汁の粘液が多いために起こるものと考えられたが、ヒポクラテス派の医師の施した治療法は比較的先進的なものであった。『ヒポクラテス全集』には望ましい治療法として痔核を結紮(けっさつ:糸などで結ぶこと)し、熱した鉄で患部を焼灼(しょうしゃく)すると記述した文書があり、焼灼器と切除についても記載がある。また、様々な軟膏をつけるといった方法も提案されている。今日でも痔の治療においては、患部を焼灼し、結紮し、切除する過程がみられる。さらに、『ヒポクラテス全集』には反射鏡を直腸内の観察に利用することについて述べた一節がある。現代の内視鏡も反射鏡の原理を発展させたものであり、この記述は内視鏡に言及した最古の記録ともいえる。
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