動機および認識論的状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/01 07:39 UTC 版)
巨大基数はフォン・ノイマン宇宙 V の文脈で理解される。これは冪集合を取る操作を超限回反復して得られるもので、与えられた集合の全ての部分集合を集めたものである。典型的には、巨大基数公理が成り立たないようなモデルは、巨大基数公理が成り立つような何らかのモデルの自然な部分モデルになっている。例えば、もし到達不能基数が存在するなら、そのような基数が現れる最初の高さで「宇宙を切り離して」しまうと、到達不能基数が存在しないような宇宙が得られる。また、もし可測基数が存在するなら、冪集合操作を「定義可能な」程度に反復するよう抑えると、ゲーデルの構成可能宇宙 L が得られ、そこでは「可測基数が存在する」という主張は成立しなくなる(例え可測基数が順序数として存在してもである)。 以上のことから、多くの集合論学者(中でもカバル学派(英語版)の伝統に影響された人々)の一致した見解によれば、巨大基数公理は、我々が「考えてしかるべき」集合を全て考えていると「言って」いるのであり、それらを否認することは「制限的」であって研究対象とすべき集合をみすみす絞る行為なのだという。更に、巨大基数公理から得られる結果はいくつかの自然なパターンに落ち着くように見える(Maddy, "Believing the Axioms, II" を参照のこと)。こうした理由から、そのような集合論学者たちは ZFC に対する数多ある拡張の中でも巨大基数公理には特別な意味があると考えている。これは、動機の明確さに劣る他の公理(例えばマーティンの公理)や、直観的に不自然だと考えられている公理(例えば構成可能性公理(英語版)(V = L))などには当てはまらないことである。こうした学派の中でも実在論者の強硬派にかかると、もっと単純に、巨大基数公理は「真」であるとすら言われる。 このような見解は、集合論学者全体の中では決して一般的ではない。一部の形式主義者に言わせれば、標準的な集合論は定義からして ZFCの結果を研究することになるので、他の体系から得られる結果を研究するなとは原理的に言いはしないものの、巨大基数を取り立てて重視することはない。また実在論者の中にも本体論的極大主義(英語版)を正当な動機として認めない人々が居て、巨大基数公理は偽であるとすら信じている。そして最後に、巨大基数公理の否認が制限的「である」ことすら否定する人々も居て、(例えば)L の中に可測基数が存在するような推移的な集合モデルが存在可能だと指摘している(L 自体はそのような性質は満たさないにも関わらず)。
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