労働契約の原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/07 02:37 UTC 版)
第3条には、労働契約の5原則が掲げられている。 労使対等の原則 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする(1項)。労働基準法第2条1項と同趣旨である。 均衡考慮の原則 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする(2項)。これには、就業の実態が異なる、いわゆる正社員と多様な正社員との間の均衡も含まれる。 仕事と生活の調和への配慮の原則 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする(3項)。これには、いわゆる正社員と多様な正社員との間の転換にもこの原則は及ぶ。 信義誠実の原則 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない(4項)。民法第1条2項、労働基準法第2条2項と同趣旨である。 権利濫用の禁止の原則 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない(5項)。民法第1条3項と同趣旨である。なお、第14~16条に権利濫用を禁止する規定があるが、権利濫用禁止原則はこの規定以外の場面においても適用される。 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとされ(第4条1項)、労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする(第4条2項)。勤務地・職務・勤務時間の限定についても、この確認事項に含まれる。これは、労働契約は、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立する契約(諾成契約)であるが、契約内容について労働者が十分理解しないまま労働契約を締結又は変更し、後にその契約内容について労働者と使用者との間において認識の齟齬が生じ、これが原因となって個別労働関係紛争が生じているところである。労働契約の内容である労働条件については、労働基準法第15条により締結時における明示が義務付けられているが、個別労働関係紛争を防止するためには、同項により義務付けられている場面以外においても、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者が契約内容について自覚することにより、契約内容があいまいなまま労働契約関係が継続することのないようにすることが重要である。このため、第4条において、労働契約の内容の理解の促進について規定したものである。「労働者の理解を深めるようにする」については、一律に定まるものではないが、例えば、労働契約締結時又は労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく変わる場面において、使用者がそれを説明し又は労働者の求めに応じて誠実に回答すること、労働条件等の変更が行われずとも、労働者が就業規則に記載されている労働条件について説明を求めた場合に使用者がその内容を説明すること等が考えられるもので(平成24年8月10日基発0810第2号)。労働基準法第15条は労働契約「締結時」のみの適用であるが、第4条は労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面や、労働契約が締結又は変更されて継続している間の各場面が広く含まれる。
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