再発見と保護・人工繁殖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 04:57 UTC 版)
かつては中国においてもトキは非常に広い範囲(北は吉林省、南は福建省、西は甘粛省まで)に生息していたが、20世紀前半に個体数が激減し、1964年甘粛省康県岸門口での目撃報告を最後に見られなくなった。このため、中国科学院動物研究所が「絶滅」の最終確認として生息数調査を行ったところ、1981年5月に陝西省洋県の姚家溝と金家河で野生のトキ7羽を発見した。この7羽は、「秦嶺1号トキ個体群」と呼称され、洋県林業局に「保護グループ」が設立された。 また、成鳥2つがい計4羽と幼鳥3羽で小さな個体群を構成していたこともあり、生息域内保全と生息域外保全との両立が必要であるという研究者間の共通認識から、保全が強力に推進されてきた。トキの生息地では、農業や狩猟に厳しい規制が課せられた。また1981年には姚家溝から衰弱した幼鳥1羽が北京動物園に送られたのを機に、人工飼育が開始された。1986年に同動物園は「トキ飼養繁殖センター」を設立し、1989年には世界初の人工繁殖に成功して「人工増殖個体群」が誕生した。1990年には「トキ救護飼養センター」が設立され、野生下で傷病した個体の収容・救護が行われるようになった。 1981年から1993年までは、野生トキの個体数は横ばいだったが、1994年以降急速に増加し、2004年以降は毎年100羽以上が誕生して巣立つようになった。 北京動物園が確立したトキの人工繁殖技術は、中国国家発明賞の二等賞を受賞した。トキの繁殖地は洋県・西郷県・城固県の3県に跨り、行動範囲はさらに南鄭区・仏坪県・勉県・略陽県・石泉県・漢中市漢台区にも及ぶ。人工飼育の拠点としては北京動物園のほか、陝西トキ救護飼養センター(洋県)と陝西省珍希野生動物救護飼育研究センター(周至県)がある。
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