侵入と定着
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/02 03:11 UTC 版)
侵入の経路としては、植物の持ち込みを意図した場合とそうでない場合がある。全くそうでない例は、様々な機材に種子などが付着して持ち込まれる場合である。完全に意図して持ち込まれるのは栽培植物として持ち込んだものが野外に逃げ出す場合である。動物は、普通は逃げ出さない条件下で飼育されるが、植物はそのような配慮がなされないから、逃げ出すのは簡単である。おおよそは以下のようなものが挙げられる。 作物(ハマダイコン、クレソンなど) 薬用植物(チョウセンアサガオなど) 牧草(コヌカグサ、ナピアグラスなど) 園芸植物(ムラサキカタバミなど) 材木用の樹木(小笠原におけるリュウキュウマツなど) その他:緑化用(シナダレスズメガヤ、ギンゴウカンなど) この両者の中間として次のような場合もある。 栽培を意図して持ち込んだ植物に紛れて入る場合 作物には、その畑に生育する雑草が付随する。これらを特に随伴植物という場合もある。そのような雑草は作物の種子に紛れて収穫され、次回も一緒に播種されるように適応したものがあり、当然のように作物の種に紛れて運ばれ、一緒に持ち込まれる。牧草や被覆植物などではそれほど混入を気にしない例もある。 植物質ではあるが栽培を意図しないものに紛れて入る場合 例えば培養土とともに入る例である。日本では検疫で土の持ち込みが禁止されているが、ミズゴケなどは認められているので、それと共に入ることもある。その他、乾燥した植物を荷造り時の詰め物にしたものから入った例(シロツメクサが有名)もある。 普通は人為的に撹乱された場所に侵入しやすい。例えば都市のさら地などでは、放置すれば帰化植物ばかり生えてくることが少なくない。外国との物資の出入り口である港や空港には特に帰化植物が多く見つかる。同様に工場や駅などの物資の出入り口にも帰化植物が入りやすい。鉄道線路のバラストを敷き詰めたような厳しい環境であっても、むしろビロードモウズイカなどは好んで生育する。沖縄県などの米軍基地が所在する地域では、軍事物資にまぎれて帰化植物が侵入する事がある。沖縄県全域に生育する帰化種のシロノセンダングサ(タチアワユキセンダングサ)は、1969年代に嘉手納基地に侵入し、そこから広がったとされている(土屋・宮城、1991)。 多くの植物はそのような場所で繁殖するものの、すでに古くからの雑草で埋められている農村や、より自然環境の保存された場所にはあまり侵入しない。日本のタンポポに関しては、在来種とセイヨウタンポポの間にそのような関係があるとされ、都市化の指標生物としてセイヨウタンポポが指定され、その分布調査が行われたこともある。 しかし、日本では河原や湿地、池沼などでは外来種が侵入し、在来種に置き換わる例が少なくない。そのような環境はもともと一定の撹乱を受けつつ成立している側面があること、それに現在の日本では水環境に富栄養化などの環境悪化が進んでいることなどが原因とも言われる。 長期にわたって栽培されていながら、ほとんど逸出していない植物もある。例えばコスモスなど、河川敷などに大量に栽培される例も多いが、野生状態で見ることはまずない。高度に品種改良が行われたものも逸出しない。たいていはその過程で野外での競争には弱くなっているからと考えられる。それでも、交配で作出された園芸品種から野生化したヒメヒオウギズイセンのような例もある。
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