伊豆箱根鉄道1300系電車とは? わかりやすく解説

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伊豆箱根鉄道1300系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 14:17 UTC 版)

西武101系電車 > 伊豆箱根鉄道1300系電車
伊豆箱根鉄道1300系電車
伊豆箱根鉄道1300系電車
(2018年12月 三島二日町駅 - 大場駅間)
基本情報
製造所 東急車輛製造
種車 西武新101系
製造年 1979年
改造所 西武鉄道武蔵丘車両検修場
施工者 西武車両
改造年 2008年 - 2009年
改造数 2編成6両
主要諸元
編成 3両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
設計最高速度 120 km/h
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
全長 20,000 mm
全幅 2,850 mm
全高 4,246 mm
台車 FS372・FS072
主電動機 直流直巻電動機
主電動機出力 150 kW
駆動方式 中空軸平行カルダン
歯車比 15:86 (5.73)
編成出力 1,200 kW
制御方式 抵抗制御
制御装置 日立製作所 MMC-HTB-20E系
制動装置 発電制動併用電磁直通空気制動
(HSC-D)
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伊豆箱根鉄道1300系電車(いずはこねてつどう1300けいでんしゃ)は、2008年に登場した伊豆箱根鉄道駿豆線用の通勤形電車である。

概要

西武鉄道新101系を改造したもので、老朽化が進行した1100系(元西武701系)の代替を目的に3両編成2本の計6両が導入された。同社武蔵丘車両検修場にて西武車両による改造を施工した上で入線し、第1編成は2008年(平成20年)12月14日より営業運転を開始している[1]

車体・編成

編成はクモハ1300形 - モハ1400形 - クハ2200形の3両編成で、種車における2両編成の偶数車(Mc2)、および4両編成の奇数車(M1・Tc1)によって構成されている[注 1]。2編成を導入したため種車は4編成になるが、いずれも東急車輛製造にて1979年に製造されたものである。また4両編成の方は2本とも元秩父鉄道直通対応車であり、後述のパンタグラフが西武101系における標準品と異なっているほか、連結器胴受の根本に金具が残されている特徴を有する。車体関係の改造点としては前面への排障器(スカート)設置[注 2]、妻面の転落防止幌の撤去(台座のみ残存)、また側面の社紋車両番号表記の変更程度である。

車体塗装は従来の鋼製車と同じく、白色をベースとして各部および妻面全体に「ライオンズブルー」を配したものであるが、若干の変更が加わった。前面は種車のブラックフェイスを引き継ぐ形で若干アレンジされている。この窓周りの黒色は種車より僅かに範囲が広げられ、センターピラーと凹部の断面が新たに黒色となった。側面では腰部の帯がこれまで太帯と細帯を組み合わせた2本であったのに対し、本系列では太帯1本のみとなってる。客用扉はこれまで西武時代にステンレス無塗装であった1100系も含めて全て車体色であったのに対し、本系列は種車のステンレス無塗装を引き継いでいる。

表示器は種車由来のものを前面に備え、行先表示には駿豆線初となる英字表記が追加された。種別表示器も残されたが、これはJR直通用に装備していた7000系と異なり「普通」の表示は行わず、「ワンマン」の表示に用いられる(2009年4月1日のワンマン運転開始以前は白幕)。また1990年以降の新造車[注 3]では側面にも行先表示器が備えられているが、本系列への設置は見送られた。

主要機器

基本的に西武在籍当時から変化はない。

制御装置は日立製作所製で、主制御器は電動カム軸式のMMC-HTB-20E系をモハに備え、1C8M方式としてクモハとあわせた2両を制御する。台車は住友金属工業製のペデスタル式空気ばね台車で、形式は電動車がFS372、制御車がFS072となる。制動装置は発電制動併用電磁直通空気制動 (HSC-D) である。

電動空気圧縮機 (CP) はクモハに搭載、種車のものは2両編成用であったため吐出量の大きいHB2000(西武での発生品)へ換装している[注 4]

補助電源装置の電動発電機 (MG) は140 kVAの日立製HG77445系を同じく元2連のクモハに搭載する。こちらは元より4両編成の廃車発生品を用いていたため、容量の問題はなかった。

パンタグラフ東洋電機製造製のPT4320S[注 5]をモハに2台搭載している。

内装・各種設備

座席はロングシートであり、基本構造は概ねそのままであるが、妻面の貫通扉が撤去されている。

内装面では同時期の西武新101系・2000系の車体更新と類似する内容の改造が施され、車椅子スペースの設置、対話式非常通報装置車内案内表示器・乗降促進放送の整備、化粧板・座席モケット・床敷物の取替、座席間へのスタンションポール設置、ドアチャイムの設置、ドア付近へのつり革増設が行われている。

改造内容や使用部品は西武新101系ワンマン車の2004・2005年度更新車に近いが[注 6]、内装材は新2000系の車体小修繕車に準拠したものとなっており、また優先席のモケットは灰色とされている。

車内表示器は鴨居部の千鳥配置で、設置個所は鴨居カバーを交換している。ドアチャイムは駿豆線車両として初めて設置された。さらに各車両の車内外には号車表示ステッカーが、そしてドアの内面にはドア番号ステッカーが貼付された。

車椅子スペースは両先頭車の先頭部右側に、優先席は両先頭車の連結面寄りに設けられている。

その他、ワンマン運転への対応が行われている。前述した新設機器への対応とあわせ、運転台周りをはじめとして各部の改修が行われた。

編成表

伊豆箱根鉄道1300系 編成表
 
三島
修善寺
入線 営業運転
開始
号車 3 2 1
形式 クモハ1300
(Mc)
モハ1400
(M')
クハ2200
(Tc)
車両番号
(旧車号)
1301
(284)
1401
(235)
2201
(1235)
2008年11月 2008年12月
1302
(292)
1402
(237)
2202
(1237)
2009年5月 2009年5月

導入後の変遷

イエローパラダイストレイン

2013年3月に行先表示器がLED式のものに交換された。

2016年12月10日から、2201編成は塗装変更の上で「イエローパラダイストレイン」として運転されている[2]。新101系落成当初のツートンカラーを再現したもので、前面窓周りの色は2両編成のウォームグレーである。2017年からは後述のイベント列車に優先的に充当されている。

  • 2023年12月20日から翌年1月12日までの間、検査入場中の3000系「HAPPY PARTY TRAIN」に代わって黒澤ダイヤのバースデーヘッドマークを装着して運転された[3]
  • 2024年2月9日から27日まで、「川柳電車」として運転された。ヘッドマークを掲出したほか、公募した川柳の入選作品が車内に展示された[4][5]

その他、伊豆箱根鉄道創立100周年記念、東京オリンピック・パラリンピックPRなどでヘッドマークの掲出や側引戸へのラッピンなどが複数行われている。

臨時列車

入線後は定期列車の他に臨時列車にも何度か充当されている。当系列を使用した臨時列車は以下の通り。LEDの行先表示器には専用の表示が掲出され、また開催日の約2週間前からヘッドマーク装着や側窓へのステッカー貼付を実施するケースが多くなっている。

2018年の「イズシカトレイン」から、ローソンチケットにチケット発券業務を委託。WEB又はローソンミニストップ店舗に有る端末「Loppi」での購入となる。チケット購入後の払い戻し、キャンセルは不可能となっている。

  • 反射炉ビヤガー電車 - 2010年8月27日・9月3日、2011年8月6・20日・9月3日、2012年7月27日・8月10・24日・9月7日、2013年7月19日・8月9・23・30日、2014年7月25・26日・8月8・9・22・23・29・30日・9月5・6日、12月21・22日(クリスマス)、2015年8月7・21・28日・9月4・11日、2016年7月29日・8月5・19・26日・9月2日、2017年7月21・28日、2018年8月10・31日、2019年8月9日・30日、2022年9月9日、2023年9月2日、2024年9月7日運転
  • 中伊豆ワイン電車 - 2010年11月19・26日、2011年11月19・26日、2012年11月9・16日、2013年11月15・29日、2014年11月28日・12月5日、2015年11月27日、2016年11月4・16日、2017年11月10日、2018年12月21日(クリスマス)、2019年12月6日運転
    • 中伊豆産のワインと各種料理が飲食できる列車[8]。2010年は「中伊豆ワイン列車」の名称であった。以降は「(西暦)中伊豆ワイン電車」となっている。
    • 2018年・2019年は「イエローパラダイストレイン」が使用された。
  • 日本酒電車「イズシカトレイン」 - 2011年2月18・25日、2012年2月18日・3月3日、2013年3月8・15日、2014年3月7・14日、2015年3月6・13日、2016年3月18・25日、2017年3月10・17日、2018年3月9・16日、2019年3月15・20日運転
    • 伊豆産の日本酒鹿料理などが飲食できる[9]。2012年からは年ごとに「イズシカトレイン2」のような名称が用いられ、さらに2015年からはローマ数字を使用し「イズシカトレインV」のような形になった。
    • 2020年3月6・13日にも運行の予定だったが、中止となっている。
    • 2018年は「イエローパラダイストレイン」が使用された。
  • チューハイトレイン「ハイリキ電車」 - 2016年7月8日、2017年9月15日、2018年7月20日、2019年7月19・20日運転
    • アサヒビールが販売するチューハイ「ハイリキ」が飲み放題である。ハイリキは伊豆の国市に所在した東洋醸造によって1983年に発売されたもの。
    • いずれも事前予約制で、定員は90名又は120名(未成年者は乗車不可)。運行区間は三島 - 修善寺間一往復が基本。
  • 「伊豆の国いちご電車」 - 2019年4月6日運転
    • 2019年4月 - 6月に実施の「静岡DC」開催にあわせ、伊豆の国市DC実行委員会が企画[11]。車内で「いちご尽くしのおもてなし」や「いちごを使ったパフェ作り」などのイベントを実施。尚、チケットは2019年3月3日に発売開始も翌日の3月4日に完売した[12]
  • 「韮山反射炉茶の庵 お茶エール電車」 - 2022年5月13日運転
    • 静岡県が事務局を務める第8回世界お茶まつり実行委員会が主催する「世界お茶まつり2022 春のお茶まつりウィーク」のプログラムのひとつ「O-CHA旅@沿線」で、静岡県内の5私鉄において、沿線のお茶を愉しめる企画をそれぞれ開催。当企画は、電車内で蔵屋鳴沢が提供する反射炉ビヤの「お茶エール」やほうじ茶IPA等の飲み物、お茶を使った特製おつまみセットを楽しめる、お茶づくしの内容となっている[15]
  • 「静コロ電車」 - 2024年10月5日運転
    • 東平商会のみしまコロッケと長泉あしたカツが食べ放題になるほか、弁当が提供される。

電車操縦体験

三島市ふるさと納税の謝礼品として、本系列を使用した操縦体験が実施されている。大場工場の線路約70mを2往復するもので、5km/h以下での運転となる。体験運転終了後に電車体験操縦修了証、手袋、伊豆箱根鉄道関連グッズがプレゼントされる。尚、このイベントでの動画撮影は禁止となっている[16]

脚注

注釈

  1. ^ 種車である西武101系においては、モハ・クモハともに制御装置を備える奇数車と補機類を備える偶数車とでユニットを組んでおり、モハとクモハで基本構造が同一であるため、このユニットを組み替える形で組成された。101系における同様の例として、263編成と三岐鉄道への譲渡車(751系)がある。
  2. ^ 西武新101系の一部に取り付けられたものと同形状であるが、本系列の種車はいずれも未設置であり、譲渡時に新たに設置された。
  3. ^ 5000系第5編成以降、7000系、3000系第6編成が該当。
  4. ^ 第1編成のクモハ284はAK3、第2編成のクモハ292はHS10を搭載していた。
  5. ^ 西武時代に秩父鉄道直通用として換装されたもの。
  6. ^ 天井周りの改造、空調機能更新、座席のバケットシート化、消火器移設が行われていないなどの違いがある。また扉開閉案内装置は省略されたが、ドアチャイムは座席下に設置されている。つり革についても扉間枕木方向の増設と優先席部の低位置化が行われていない一方で、こちらでは4扉車と同様に扉付近線路方向への増設が行われた。乗務員室内でも表示設定器は同等品であるが、非常通報の受報器は全くの別物である。

出典

  1. ^ “伊豆箱根鉄道1300系が営業運転を開始”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2008年12月13日). https://railf.jp/news/2008/12/15/145100.html 
  2. ^ 駿豆線イエローパラダイストレイン運行開始およびイベント開催のお知らせ 伊豆箱根鉄道公式サイト、2016年12月15日。
  3. ^ 伊豆箱根鉄道「イエローパラダイストレイン」に「黒澤ダイヤ」の誕生日ヘッドマーク - 鉄道ニュース 2023年12月21日掲載 鉄道ファン・railf.jp
  4. ^ 「川柳電車」運行のお知らせ” (PDF). 駿豆線沿線地域活性化協議会(伊豆箱根鉄道駿豆線沿線の自治体(三島市、函南市、伊豆の国市、伊豆市)、伊豆箱根鉄道). 2024年2月4日閲覧。
  5. ^ 伊豆箱根鉄道 川柳電車 運転”. 鉄道コム. 2024年2月4日閲覧。
  6. ^ “伊豆箱根鉄道 ビール電車「2011反射炉ビヤガー電車」”. アットエス (静岡新聞). (2011年7月13日). http://www.at-s.com/event/detail/100041213.html 
  7. ^ 1100系「反射炉ビヤガー電車」は都合により1300系に変更します - 伊豆箱根鉄道公式サイト 2011年9月2日
  8. ^ 中伊豆ワイン列車が運行いたします。 - 伊豆箱根鉄道公式サイト 2010年10月27日
  9. ^ 日本酒電車イズシカトレイン (PDF) - 伊豆箱根鉄道公式サイト 2011年1月17日
  10. ^ いずはこねふれあいフェスタ2018開催 - 伊豆箱根鉄道公式サイト 2018年11月25日
  11. ^ “伊豆箱根鉄道で『伊豆の国いちご電車』運転”. 鉄道ファン. railf.jp鉄道ニュース (交友社). (2019年4月7日). https://railf.jp/news/2019/04/07/200500.html 
  12. ^ 4月6日「伊豆の国いちご電車」を初運行 - 伊豆箱根鉄道公式サイト 2019年2月24日
  13. ^ “伊豆箱根鉄道で『いずっぱこ・よしもとお笑い電車』運転”. 鉄道ファン. railf.jp鉄道ニュース. (2019年6月30日). https://railf.co.jp/news/2019/06/30/195000.html 
  14. ^ 〈伊豆箱根鉄道×沼津ラクーンよしもと劇場〉【先着150名様限定!】 EXIТ・鈴川絢子らと行く「貸切お笑い電車」ツアー - YAHOO!ブログ 沼津ラクーンよしもと劇場公式 2019年6月5日
  15. ^ 「韮山反射炉茶の庵 お茶エール電車」開催について - 伊豆箱根鉄道公式サイト 2022年3月31日
  16. ^ いずっぱこ電車操縦体験実施について 伊豆箱根鉄道公式サイト 2018年3月11日

関連項目

他社の西武新101系の譲渡車




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