今後に向けた議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 18:45 UTC 版)
今後の日本のろう教育をどうするべきかという議論は現在もなお続いている。手話利用の拡大という方向性には多くの論者が賛同しているものの、人工内耳や聴覚口話法の評価・扱いについては立場が分かれている。2008年4月に幼稚部と小学部が開校した私立明晴学園は、日本手話による「バイリンガル・バイカルチュラルろう教育」を標榜し、聴覚口話法は完全に排除する立場である。ただし同学園は公式ウェブサイトにおいて、補聴器や人工内耳の使用に反対しているわけではないし、校内でそれを使用することを禁止もしていないことを明言している。また社会学や脳科学など、直接ろう教育を専門としないけれどもろう教育についての発言を活発に行っている研究者たちの中には、明晴学園の教育法を支持し、それ以外のろう学校の教育法に疑問を投げかける意見も多い(斉藤くるみ、佐々木倫子など)。 一方、全日本ろうあ連盟と「ろう教育の明日を考える連絡協議会」は、ろう学校での基礎的なコミュニケーション手段を手話(「日本手話」に厳密に限定せず、日本語対応手話も容認する)にすべきという主張や、手話と日本語の二言語習得を目指すべきであるという主張は明晴学園と同じながら、キュードスピーチや人工内耳、読話、口話など、明晴学園が排除している要素も認めるべきであるとの立場を採る。また全日本ろうあ連盟と「ろう教育の明日を考える連絡協議会」は、聴覚障害者には聴覚口話法は苦痛であるとか、聴覚障害者には口話は無理であるというような決めつけをすべきではないとの立場も明らかにしている。 なお、京都府立聾学校のろう者教員である脇中(京都大学にて教育学の博士号も取得)は、現在の日本の公立ろう学校の教育実践における豊富な手話活用の試みを無視してそれらを「口話法」と断定する書籍に反論するウェブ書評が何度も削除された経緯に言及しつつ、バイリンガルろう教育を全面的に賛美する近年の論調を批判する自著の出版に際して恐怖も感じていると述べている。
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