九嶋勝司
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1954年(昭和29年)、当時福島医科大学産婦人科教授であった九嶋勝司(のち秋田大学学長、東北大学教授)は、更年期障害と類似の症状が思春期、妊娠、産褥などによっても発現することに着目して、血の道について西洋医学的に臨床的な検討を加えた研究論文を『日本医師会雑誌』に発表し「婦人に見られる更年期障害類似の自律神経症候群を血の道症と言う」と定義することを提唱した。この論文において、血の道症の原因の1つは内分泌にあるが、エストロゲンの欠乏やゴナドトロピンの過剰など単一ホルモンの過不足によるのではなく相対的な不均衡にあるとし、これを「内分泌性血の道症」と分類した。また、第2の原因は精神の葛藤に基づくものであり、苦しい葛藤が身体症状に逃避していることによるとして、これを「心因性血の道症」と分類した。さらに、血の道症の発生頻度、症状の分類、他疾患との鑑別、内分泌性と心因性の鑑別などについて明らかにし、ホルモン療法その他の薬物療法、臍帯埋没療法などを紹介した。 なおその後、九嶋はさらなる検討を加え1971年(昭和46年)の論文にて、「血の道症」を「不定愁訴症候群」と改め、「内分泌性血の道症」を「自律神経失調症」とし、「心因性血の道症」は心身症の一つであり「心因性不定愁訴症候群」と呼ぶことを提唱している。 その後、他の医師達は「血の道症」について以下のような解説あるいは定義を行っている。 医史学者でもある龍野一雄は、1979年の著書『漢方医学大系』にて「血の道症は更年期様症候群、婦人身体ノイローゼ、婦人心身症などのいろいろな呼び方があるが、要するに主として精神 - 自律神経 - 月経障害の3つががっちり組み合わされた症候群」と述べている。 大塚敬節は、大塚没後発行の著書『大塚敬節著作集』(1982年)にて「血の道症というのは婦入特有の神経症で、続けてそうは(掻爬)を受けた後、流産の後、またお産のときに、びっくりしたり、心配ごとがあったりして、それがもとで起こることがあります。また、更年期障害も血の道症のなかに入ります」と述べている。 山田光胤は、1995年の著書『漢方の診察と治療:基礎編』にて「血の道症とは、成人女性のみに起こる病態であって、女性特有の生理現象と密接に関連して起こる精神・神経症状を基調とする病態である。女性の生理現象には、月経、妊娠、分娩、更年期等の正常なものと、流産、死産の異常な場合とがある。」と定義している。
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