中国:漢名と漢訳の発祥
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 16:11 UTC 版)
「外国地名および国名の漢字表記一覧」の記事における「中国:漢名と漢訳の発祥」の解説
漢字以外の文字を持たない中国では古来、外国の地名はすべて漢字で書き表されてきた。たとえば「波斯」「天竺」のように、古くから中国に知られていた地名、およびインド、朝鮮、東南アジア諸国など、主にアジアを中心とする外国の地名は歴史書などに記録が残る。明末には、世界地図『坤輿万国全図』(1602年)を著したマテオ・リッチや、世界地理書『職方外紀(中国語版、英語版)』(1623年)を著したジュリオ・アレーニら、カトリック宣教師によって漢文で書かれた西洋地理書(前期漢訳洋書)により、主にヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカの地名が新たに漢訳され、中国語における西洋地名の漢字表記に大きな影響を与えた。また、清代にプロテスタント宣教師ロバート・モリソンが著した『華英字典(中国語版、英語版)』三部(1815年-1822年)をはじめとする後期漢訳洋書の影響も大きかった。しかし、外来の地名の漢訳方法に関して、定められた基準のなかった時代にあっては、同一地名に対して複数の漢訳表記がなされる事例も多く、外国地名の漢字表記は多種多様なものが混在していた。そのような外来名の表記の不統一による混乱を解消するため、19世紀以来、西洋人宣教師と中国人自身の手により、努力が重ねられた。その中で、外国地名についても、個別的な表記とならざるを得ない意訳を避け、表記の統一的な基準を定めることが可能な音訳を優先して使用するよう推奨されてきた。たとえば、意訳地名の「新堡」(ニューカッスル)と「白山」(モンブラン)はそれぞれ、「紐卡斯爾」や「蒙布朗」のような音訳地名に取って代わられた。特に、1924年に刊行された『標準漢訳外国人名地名表』は、現代中国語における外国地名の表記の標準化において重要な位置を占めている。ただし、音訳優先とされながらも、「牛津」「地中海」「中東」のような、現在も安定して用いられている意訳地名も存在する。 1950年代初頭、新華社通信訳名室(中国語版)は世界の人名・地名について翻訳を開始し、1960年代には当時の首相である周恩来によって新華社が翻訳担当となるように指示がなされた。 「中国語における外国固有名詞の表記」も参照
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