中国における薬物犯罪と死刑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 08:06 UTC 版)
「2010年中国における日本人死刑執行問題」の記事における「中国における薬物犯罪と死刑」の解説
詳細は「中華人民共和国における死刑」を参照 中華人民共和国刑法は、人命が損なわれない犯罪に対しても「社会的影響を与える」場合には、死刑を幅広く規定しており、そのひとつに麻薬犯罪がある(中国の刑法典では麻薬を包括的に定義しており、大麻や覚醒剤等も「麻薬」に含まれる)。麻薬の密輸に関しては、アヘン1キログラム以上 もしくはヘロイン・覚醒剤50グラム以上を密輸した場合(麻薬犯罪集団の首謀者の場合は、麻薬の量と関係なく)、「懲役15年、無期懲役または死刑」と規定されている。また密売や密造も同様に最高刑は死刑である。 薬物犯罪に対する厳罰の理由として、中国司法関係者は、「麻薬犯罪はアヘン戦争の歴史がある中国で敏感なものだ。安易な判断で(量刑を軽くして)犯罪者に間違ったサインを送るわけにはいけないことを日本人も理解すべきだ」と主張している。 また前述の中国司法関係者によると、中国人が1キログラム以上の麻薬密輸に関与した場合「何のためらいもなく死刑を確定させる」という。なお密輸に関わるのは中国人だけではないため、今までに摘発された密輸犯の国籍は十数か国に及ぶ。2001年には麻薬密輸罪で韓国人に対し死刑が執行されている。 また、パキスタン系イギリス人男性が2007年9月にウルムチの空港に到着した際、スーツケースからヘロイン4キロが見つかり逮捕された。2008年10月に一審で死刑判決を受け、12月21日の最高人民法院(最高裁)で刑が確定、同月中に刑が執行された。国際的には麻薬犯罪で最高刑で死刑が規定されているのは中国を含むアジア16ヶ国である。 なお、中国の死刑執行であるが、殺人犯のような「凶悪犯」の場合、死刑判決確定後迅速に執行されるが、薬物犯罪の場合には組織犯罪であることが多いため、「捜査の必要性」から死刑執行に2年から5年の猶予があるという。そのため今回死刑が執行された4人に確定から執行まで猶予期間があったのはこのためであるといえる。 また今回死刑が執行された4人は中国東北部で拘束されたが、いずれも北朝鮮製の覚醒剤を取り扱っていたと見られている。中国人民解放軍の関係者によれば、これら北朝鮮製の覚醒剤で中国に密輸される9割は北朝鮮の朝鮮人民軍が関与しており、同国軍には覚醒剤製造を任務とする部隊すら存在するという。いわば、中国の捜査当局は中国国内の麻薬汚染が無視できなくなってきたことから、「友好国」である北朝鮮からの麻薬密輸ルートの摘発を強化し、さらに死刑による威嚇で押さえ込もうと懸命になっていたというわけである。
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