三権の関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 09:16 UTC 版)
内閣と国会の関係は議院内閣制がとられる。内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名する(内閣総理大臣指名選挙。首班指名とも呼ばれる)(日本国憲法第67条1項)。また、内閣総理大臣は国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員の中から選ばれなければならない(日本国憲法第68条1項)。内閣総理大臣その他の国務大臣には議院出席の権利・義務が認められている(日本国憲法第63条)。 内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負い(日本国憲法第66条3項)、衆議院で内閣不信任決議が可決(あるいは信任決議が否決)されたときは内閣は10日以内に総辞職か衆議院の解散・総選挙を選ばなければならない(日本国憲法第69条)。一方、内閣は衆議院を解散する権限を有していると解されている(なお、解散権の実質的根拠については争いがある)。内閣総理大臣が欠けたとき、または衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職をしなければならない(日本国憲法第70条)。 この他、国会の両議院には国政調査権が付与され(日本国憲法第62条)、この権限を適切に行使することにより、国会には内閣の行動を監視・監督する機能も期待されている。 一方、国会・内閣と裁判所との関係においては日本でも司法権の独立の原理が採用される。すべて裁判官はその良心に従い独立してその職権を行い、憲法および法律のみに拘束されると規定されている(日本国憲法第76条3項)。 国会から裁判所に対する抑制としては弾劾裁判があり、著しい職務上の義務違反や非行などのあった裁判官は、国会議員で構成される裁判官弾劾裁判所が弾劾する(日本国憲法第64条)。一方、裁判所は国会の制定した一切の法律の憲法適合性を審査する違憲立法審査権を有するとされている(日本国憲法第81条)。 内閣から裁判所に対する抑制としては、裁判官の任命権(最高裁判所長官については指名権)がある。最高裁判所長官は天皇が内閣の指名に基づいて任命し(日本国憲法第6条2項)、最高裁判所の長官以外の裁判官は内閣でこれを任命する(日本国憲法第79条1項)。最高裁判所裁判官の任命については、その発足当初、裁判官任命諮問委員会の答申に基づいて任命が行われていたが、内閣の責任を不明確にするものとの批判があったとして廃止された経緯がある。この点については常設的な委員会の設置は憲法の趣旨に反するとみる学説もあるが、公平で非党派的な選考委員会が実質的任命を行うような制度にすべきとの学説が対立し議論がある。なお、現在は、最高裁判所事務総局・最高検察庁・日本弁護士連合会などが最高裁判所裁判官の候補者を推薦し、内閣がこれを追認する形で任命が行われている。また、最高裁判所長官については前任の最高裁判所長官の推薦に基づいて任命が行われている。 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣で任命する(日本国憲法第80条1項前段)。憲法解釈上は、明白な任命資格要件の欠如の場合を除いて内閣は任命拒否できないと解されている。実務上も裁判官の空席の数に形式的に一人を加えた名簿が作成されて任命が行われており、また実質的に指名された者が任命を拒否された例はないとされている。
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