ヴェーダ後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 13:51 UTC 版)
ヴェーダ後のヒンドゥー教では様々な宇宙進化論(創造神話)が語られ、その多くにブラフマーが関わっている。インドの宇宙進化論にはサルガ(最初の創造)とヴィサルガ(第二の創造)という考え方が存在する。これはインド哲学の持つ2つの現実、すなわち普遍的、形而上的な現実と常に変化する認識可能な現実というコンセプトに関係している。そして後者は際限なく循環を繰り返しているとされ、すなわち我々の認識する宇宙、生命は継続的に創造され、進化し、霧消してそしてまた創造される。ブラフマンなのか、プルシャなのかデーヴィなのか、ヴェーダの中でも最初の創造者に関して様々な議論が見られる。一方でヴェーダ、あるいはヴェーダ後の文献では第二の創造者に関する議論も展開されており、場合によってはそれぞれの宇宙のサイクル(劫、kalpa)ごとに違う神や女神が第二の創造者となるのだと語られる。 マハーバーラタやプラーナ文献に語られるように、また多くの研究がそう結論しているようにブラフマーは第二の創造者であると考えられている。ブラフマーは全ての形ある物を創造したが、しかし原初の宇宙は創造しなかった。 バーガヴァタ・プラーナ(英語版)(ヴィシュヌ派のプラーナ)にはブラフマー神は原初の海から生まれたという言及が複数見られる。このプラーナによれば、ブラフマーは時間と宇宙が生まれた瞬間にハリ(ヴィシュヌのこと)の臍から生える蓮の中に出現する。この時ブラフマーは寝ぼけており、宇宙をひとつにまとめるだけの力を発揮できる状態ではなかった。混乱の中で彼は修行者となって瞑想にはいる。すると自分の心の中にいるハリ(ヴィシュヌ)の存在に気が付き、宇宙の始まりと終わりを見る。するとブラフマーは世界を創造する力を取り戻す。ブラフマーはその後プラクリティとプルシャをつなぎ合わせて、めまいのするほど多くの生物と、複雑極まりない因果関係を作り上げた。したがってバーガヴァタ・プラーナはマーヤー(真実を覆い隠す目に見える物)を作り出す能力をブラフマーに認めている。ブラフマーは天地創造のため全てに善と悪を吹き込み、物質と魂を作り、始まりと終わりを作った。 対照的にシヴァ派のプラーナではブラフマーとヴィシュヌはアルダナーリーシュヴァラ(シヴァとパールヴァティの融合した神)から誕生したと語られている。あるいは、ルドラ(シヴァの前身)がブラフマーを創造したり、またはカルパごとにヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーが持ち回りでお互いを創造するとされる。従ってほとんどのプラーナ文献ではブラフマーに与えられた創造の力はより高次の神の力や存在に依存している。 プラーナ文献はブラフマーを時間を創造する者としている。プラーナでは人間の時間とブラフマーの時間が関連づけられており、たとえばマハーカルパ(大劫、宇宙の寿命)はブラフマーにとっての1昼夜であるとする。 様々なプラーナに語られるブラフマーの描写は多岐にわたり、一貫性に乏しい。例えばスカンダ・プラーナ(英語版)では女神であるパールヴァティが「宇宙の母」と呼ばれており、彼女がブラフマーを含む神々と3つの世界を創造したと語られている。そしてスカンダ・プラーナではパールヴァティが3つのグナ(サットヴァ、ラジャス、タマス)をプラクリティ(物質)と結び付けて認識可能な世界を作り上げたことになっている。 ブラフマーがラジャスに対応する神であるというヴェーダ時代の議論はプラーナ文献や、タントラの中でも展開されている。これらの文献ではサラスヴァティー(ブラフマーの配偶神)がサットヴァ(純質。調和や善、平和的な性質)であるとされ、それによりブラフマーのラジャス(激質。良くも悪くもなく、動的な性質)が補完されると語られる。
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